HPVとは
今回はHPVワクチン接種について解説しようと思います!
そもそHPVってどういうウイルスなの?
HPVとはヒトパピローマウイルス(Human Papillomavirus)の略で、200種類以上のタイプがあります。性的接触により感染するごくありふれたウイルスで女性の50%以上が一生に一度は感染するといわれています。
ほとんどは感染してもウイルスは自然に消えますが、一部の人でがんになってしまうことがあります。
HPVは皮膚や粘膜に感染するウイルスで、その型によっていろんな病態を呈します。
発癌のリスクによって、ローリスク型とハイリスク型に分かれています。
出典:病気がみえる vol.9
ローリスク型は、6型や11型のような尖圭コンジローマの原因となる型です。
それに対してハイリスク型は子宮頸がんになる可能性が高いもので、少なくとも15種類あります。
中でも16型や18型は子宮頸がんの前駆病変の原因となり、子宮頸がんの多くからハイリスク型HPVが検出されます。
前駆病変とは、がんになる手前の異常な状態です。
子宮頸がん検診に関しては、別の投稿「子宮頸がん(検査)」で解説しているので参考にしてみて下さい!
HPVのせいで子宮頸がんになるから、予防するためにHPVワクチンを接種しようっていうことだね!!
そういうことです!!
というわけで、ここからはHPVワクチンについて説明していきます。
HPVワクチンと子宮頸がん
HPVワクチンの種類
HPVワクチンは、防ぐことができる種類によって、以下の3種類があります。
・2価ワクチン(サーバリックス®)
・4価ワクチン(ガーダシル®)
・9価ワクチン(シルガード®9)
ワクチン効果は基本的にワクチンに含まれるHPVタイプごとの感染に限って、高い有効性が認められています。つまり、
2価ワクチン(サーバリックス®):2種類
→子宮頸がんの主な原因となるHPV16.18型
4価ワクチン(ガーダシル®):4種類
→HPV16.18型+尖圭コンジローマの原因となるHPV6.11 型
9価ワクチン(シルガード®9):9種類
→上の4つ(HPV6.11.16.18型)+他のハイリスク型(HPV31.33.45.52.58型)
上の図をみて分かるように、全てのワクチンがHPV16型と18型の感染を防ぐことが可能です
HPV16型と18型による子宮頸がんは60~70%を占めているため、2価ワクチン(サーバリックス®)と4価ワクチン(ガーダシル®)が普及すれば、子宮頸がんの60~70%が予防可能となります
9価ワクチン(シルガード®9)はHPV16型と18型に加えて他のハイリスク型5種類のHPV感染も予防できるので、子宮頸がんの90%を予防できます✨
出典:公益社団法人 日本産科婦人科学会 子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために
HPVワクチンさえ打てば子宮頸がんになる可能性はかなり低くなります
結局どのワクチンを打ったらいいの?
結論から言いますと、9価ワクチン(シルガード®9)の接種をオススメします。
日本産婦人科学会のHPにも以下のような記載があります。
2023年度以降は、9価ワクチンの定期接種と幅広い年代へのキャッチアップ無料接種の普及を推進する
公益社団法人 日本産科婦人科学会 子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために
じゃあ2価か4価をすでに打っている場合は、追加で9価ワクチンを打った方が良いの?
その必要はありません!
追加で9価ワクチンを打ったことによる重篤な副作用の報告はありませんが、すでに1番頻度の高いHPV16.18型に対する免疫は作られているからわざわざ打つ必要がないという感じです。
WHOの提言内容でも、
①その他のタイプを予防することによる効果は限定的であること、
②異なる種類のワクチンを接種した場合の有効性と安全性のデータは限られている
ことから推奨していません。
ワクチンを打つなら1番効果を高くしたいという気持ちはよくわかります(*・ω・)(*-ω-)ウンウン♪
ただしそれ以上に大切なことは、
①HPVワクチンを接種し、
②定期的に子宮頸がん検診へ行くことです!!!
HPVワクチン接種の具体的な流れ
現在(2024年2月)、HPVワクチンは小学校6年生~高校1年生の女子を対象に、定期接種が行われています。
2023年4月から、シルガード9も定期接種の対象となり、公費で受けられるようになりました。
(対象年齢以外の方は自費での接種となります)
2022年より無料キャッチアップ接種が開始となり、
1997~2005年度生まれかつ過去にHPVワクチンを計3回接種していない女性は、
2022年4月~2025年3月末の間のみ公費でワクチンを接種できます
HPVワクチンのスケジュールは以下の通りです。
出典:厚生労働省 ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がんとHPVワクチン~
- 2価ワクチン(サーバリックス®):0、1、6ヵ月の3回
- 4価ワクチン(ガーダシル®):0、2、6ヵ月の3回
- 9価ワクチン(シルガード®9):年齢によって異なる(上図参照)
”キャッチアップ接種”の対象
・1997〜2005年度生まれ
・HPVワクチンを3回接種していない
・期限は2025年3月末まで
*ただし、3回打つには6ヶ月かかる
→2024年9月末までには1回目を打たないといけない!!!!!!
なんで何回も接種しないといけないの?
複数回接種することで、抗体を体内に長期間、高濃度で産生し続けることができるからです✨
(少なくとも10年以上は抗体が感染を予防して続けます)
*抗体とは、免疫の反応によって産生されたタンパク質で、ウイルスなどの病原体から体を守ります
ここからはいくつかの質問に答えていきます!
ワクチンを打ってしまえば子宮頸がん検診はいかなくていいの?
HPV感染を完全に予防できるわけではないので、ワクチンを打った人も子宮頚がん検診は行きましょう!!
もうHPVに感染しちゃってもワクチンを打ったら治るの?
すでに感染している場合、治療効果はありません!
そのため、性交前のまだHPVに感染していないタイミングにワクチン接種することが最も重要!!!
思春期は免疫反応が良く、さらに初交前にワクチン接種すると予防効果が高いので、10~14歳のタイミングが最も推奨されます。
何歳までワクチンを打って良い?
45歳です!
この年齢層まではワクチンの有効性が証明されています。
*46歳以上では臨床試験などでのデータがないので推奨はしませんが、添付文書上は可能です。
すでの感染していたりや検診でHPV陽性って言われたら、もうワクチンは意味ない?
HPVにはいくつかの型があり、まだ感染していない型への感染予防になるので接種する価値は十分にあります。
*ただし、さっきも言ったように治療効果はないので注意してください。
妊娠中に接種するのは大丈夫?
妊娠中に接種することに対する有効性や安全性は確立していないから接種しません!
とはいっても、妊娠や胎児に影響を及ぼすというデータがあるわけでもないです🤔
ワクチン接種中に妊娠した女性のデータで、自然流産や新生児死亡、先天奇形なその発生率は接種群とそうでない群で差はありません。
現段階では、最初のワクチンを打った後に妊娠が判明した場合は分娩後に次のワクチンを打ちましょう!
HPVワクチンの安全性
HPVワクチンは本当に大丈夫?
HPVワクチンって接種の推奨を控えたりしていた時期があるけど本当に大丈夫なの?
HPVワクチンは1度接種を差し控えられたということもあり、打つことに抵抗を感じる方もいるでしょう。
そもそも、どうして差し控えになったのかというと、
HPVワクチンは2013年4月に定期接種化されました!
ただ、接種後に持続する疼痛など様々な症状の訴えが相次ぎ、十分に情報を提供できない状況であると判断し、2013年6月より厚労省が差し控えました。
この「多様な症状」がHPVワクチンによる症状である可能性を否定できなかったので、いったん差し引いたんですね🤔
この因果関係に関して、いくつか報告されております。
慢性の痛みや運動機能の障害などHPVワクチン接種後に報告された「多様な症状」とHPVワクチンとの因果関係を示す根拠は報告されておらず、これらは機能性身体症状と考えられる
2017年11月 厚生労働省専門部会
HPVワクチン接種歴のない女子でも、HPVワクチン接種歴のある女子に報告されている症状と同様の「多様な症状」を呈する人が一定数(12〜18歳女子では10万人あたり20.4人)存在すること、すなわち、「多様な症状」がHPVワクチン接種後に特有の症状ではない
2016年12月 厚生労働省研究班(祖父江班)の全国疫学調査
さらに、名古屋スタディーという名古屋市で行われたアンケート調査があります。
その調査結果では、24種類の「多様な症状」の頻度がHPVワクチンを接種した女子と接種しなかった女子で有意な差がなかったことが示されました。
出典:公益社団法人 日本産科婦人科学会 子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために
以上をまとめると、HPVワクチン接種後の影響と考えられていたいろんな症状はHPVワクチンと関係がなかった!!!
ということが証明されました🎊🎊
これらの結果から、2022年4月より定期接種を積極的に推奨するようになりました!!
副作用
ワクチン接種による副作用は以下のものがあります
出典:厚生労働省 小学校6年生~高校1年相当の女の子と保護者の方へ大切なお知らせ(詳細版)
ワクチンを打った部位に痛みや腫れなどが局所的に出現することがあり、頻度としては約8割以上の方に生じます。
けっこう多いね!
確かに他のワクチンと比較してもより高頻度に局所の疼痛が報告されています💦
原因としては、他の定期接種ワクチンは皮下注射であるのに対して、HPVワクチンは筋肉注射であることが考えられます。
ただし、症状は数日程度でなくなるため問題はありません!
また表の症状に加えて、「予防接種ストレス関連反応」というHPVワクチンに限らず、ワクチン全体に言える反応があります。
これは接種時の不安から交感神経や副交感神経が活性して過換気、手足のしびれ、迷走神経反射(めまい、失神など)が出現する反応です。
そのため、失神などの転倒を避けるために接種後30分は様子を見ます(特に15分は注意が必要です)
以上の対応から、HPVワクチンも他のワクチンと同様の対応で問題ありません。
とはいえ、24時間以内は過激な運動を控え、HPVワクチン接種後になにか症状が現れた場合は、早めに接種をした医療機関へご相談してください。
専門医療機関の受診が必要な場合は、都道府県ブロック単位で診療体制が整えられており、厚生労働省のHPや自治体のHPで最新情報を確認できます。
出典:厚生労働省 「HPV相談支援体制・医療体制強化事業」
無料キャッチアップ接種
日本では、上でもお伝えしたように、2013年6月から副作用の問題によって接種の推奨を約9年間差し控えていました。
しかし、HPVワクチンの効果と安全性に関する多くの知見が得られたため、2022年4月より定期接種を積極的に推奨し、さらに接種機会を逃した女性への救済処置として、公費での接種(無料キャッチアップ接種)が開始されました。
対象者は以下の通りです。
・定期接種:小学校6年生(12歳)~高校1年生(16歳) ・無料キャッチアップ:1997~2005年度生まれ、かつHPVワクチンを合計3回受けていない
無料キャッチアップ接種は、2022年4月~2025年3月末の3年間が対象です!
何度も繰り返しますが、3回すべて打つのに6ヶ月かかるので2024年9月末までには1回目を接種しないといけません
厚生労働省のHPを添付しますので興味がある方はご参照ください。
終わる前に早くいかないと!!!
思い立った日が吉日だよ✊
HPVワクチンは結局打つべき?
問答無用で打つべきです!!!
2020年以降、スウェーデン・イングランド・デンマークから相次いでHPVワクチン接種者での浸潤子宮頸がん減少が報告されました!!
非接種者の子宮頸がん発生率を1とすると、スウェーデン・デンマーク・イングランドでそれぞれ88%減・86%減・87%減という結果になりました!
8割以上減ったっていうこと!!?
そういうことです👍
また、WHOも子宮頸がん検診とHPVワクチンを組み合わせ、それぞれの欠点を相互に補填しあうことで、より効果的な子宮頸がんの予防を目指しています。
WHOシミュレーションでは、
- 女子の90%がHPVワクチンを接種する
- 女性の70%が生涯で2回以上子宮頸がん検診を受ける
- 子宮頸がん病変を指摘された女性の90%が適切なケアを受ける
以上の条件を達成すれば今世紀中に子宮頸がんは排除可能という結果が出ています✨
これは受けるしかないね!
最後に
いかがでしたでしょうか?
今回はHPVワクチンに関して解説しました!
一番お伝えしたいことは、
・ワクチン接種により高確率で子宮頸がんを予防することが出来る ・HPVワクチンを打ちましょう! ・子宮頸がん検診も受けましょう(ワクチンを打っていてもです!)
この3つです!
これからも役立つ情報を届けられるよう投稿し続けます🍀
最後まで読んで頂き誠にありがとうございます😊
【参考文献】
産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2023
厚生労働省 ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がんとHPVワクチン~
公益社団法人 日本産科婦人科学会 子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために
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