今回は、多くの女性が関心を持ちながらも「なんとなく不安」「副作用が心配」と躊躇しがちなピル(経口避妊薬)について、産婦人科医の視点から詳しく解説します。
この記事を読むことで、ピルに対する漠然とした不安が解消され、自分に合った選択ができるようになります。

この記事はこんな人にオススメです!
- 毎月の生理痛がつらくて悩んでいる方
- PMS(月経前症候群)でイライラや落ち込みがひどい方
- ピルを始めたいけど副作用が心配な方
- ピルについて正確な医学情報を知りたい方
- 避妊方法を検討している方
【基礎知識】ピルとは何か?種類と費用を知ろう
ピルの正体|2つの女性ホルモンの組み合わせ
ピルとはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2つの女性ホルモンを含んだ錠剤のことです。
エストロゲン(卵胞ホルモン)の働き
- 子宮内膜(赤ちゃんのベッドになる部分)を厚くする
- 女性らしい体つきを作る
- 骨を丈夫にする
- 肌や髪の潤いを保つ
プロゲステロン(黄体ホルモン)の働き
- 子宮内膜を妊娠に適した状態に整える
- 基礎体温を上げる
- 水分をため込む(むくみの原因にもなる)
- 食欲を増やす
この2つのホルモンのバランスをコントロールすることで、生理痛の改善や避妊効果が得られるのです。
「低用量ピル」と呼ばれるのは、ホルモンの量を必要最小限に抑えているからです。
体に負担をかけずに、さまざまな効果を得ることができます。
日本で使われている2種類のピル
日本では、使用目的によって以下の2種類に分類されます。
■ OC(オーシー:経口避妊薬)
正式名称は「Oral Contraceptive(オーラル・コントラセプティブ)」といいます。
- 主な目的:避妊
- 保険適用:なし(自費診療)
- 1か月の費用:約2,000~3,000円
- 処方:産婦人科クリニック、オンライン診療も可能
■ LEP(レップ:低用量エストロゲン・プロゲステロン配合剤)
正式名称は「Low dose Estrogen Progestin(ロー・ドーズ・エストロゲン・プロゲスチン)」といいます。
- 主な目的:月経困難症(生理痛)や子宮内膜症の治療
- 保険適用:あり
- 1か月の費用:約500~2,000円(3割負担の場合)
- 処方:産婦人科での診察が必要
実は、OCとLEPは成分がほぼ同じです。
海外では区別されておらず、使用目的によって日本で呼び方が変わるだけです。
この記事では、わかりやすく「ピル」と統一して説明していきます。
ピルの種類について詳しく知りたい方はこの記事を参照してください😊
ピルのメリットは以下のようにたくさんあります✨
●生理の悩みが解消(月経困難症⇩、過多月経⇩、月経不順⇩(月経周期の調節)、PMS⇩)
●婦人科疾患改善(子宮内膜症⇩、機能性卵巣嚢胞⇩)
●骨粗鬆症を予防
●ニキビの改善
●がんになりにくい(卵巣がん⇩、子宮体癌⇩、大腸癌⇩)

どうしてこんなにたくさんのメリットがあるの?

それは生理の仕組みを理解するとわかりやすいよ!!
ということで、生理とピルの仕組みについて解説していきます!!
【仕組み理解】なぜピルが効くのか?生理の仕組みから解説

生理は毎月来るけど、何で起こっているのかよくわかってないな~
ピルがどのように働くのかを理解するために、まず正常な生理の仕組みを知っておきましょう。
生理とは、約1カ月(約28日)の周期で起こる出血のことで、医療用語では「月経」と呼びます。
「妊娠に向けて受精卵が子宮にくっつく環境を整えては、不要なので体外に排出する」というサイクルを繰り返しています。

子宮は、妊娠しても大丈夫な環境をつくるために①増殖期と②分泌期、③月経期の3つのステップがあります。
増殖期(生理終了後~排卵前の約14日間)


出典:病気がみえるvol.9 婦人科・乳腺外科(第4版)
増殖期では、エストロゲンが主役となります。エストロゲンの働きでが増えることで子宮内膜がだんだん厚くなっていきます。

受精卵が着床しても大丈夫なようにエストロゲンがベッドの骨組みをつくっているんだね💡

卵巣の中では卵子が育っていき、排卵に向けて準備を進めていきます
分泌期(排卵後~生理前の約14日間)


排卵後のタイミングを「分泌期」といいます。分泌期では主にプロゲステロンがはたらきます。
分泌期ではプロゲステロンの働きで、子宮内膜が分泌物を出し、よりふかふかの状態になります。
これは、ベッドの骨組みにふかふかのベッドを敷いているイメージです。
受精卵が気持ちい状態で寝床につけるように万全の状態を整えているのです。

プロゲステロンがふかふかのベッドを敷くんだね💡
この時期に基礎体温が上がり、体が妊娠に備えた状態になります。

生理の前にはこんなに大きな変化が起こっているのか⚡
しかし、妊娠をしなかった場合はベッドを壊さないといけません。それが次の月経期(いわゆる生理)です。
月経期(生理の3~7日間)


月経期は作ったベッドを取り壊す期間です。
妊娠が成立しなかった場合、エストロゲンとプロゲステロンが急激に低下します。
すると、せっかく準備したベッド(子宮内膜)が不要になり、剥がれ落ちて子宮外へ排出されます。
これが生理(月経)です。

いつも生理の最初が1番つらい。。。

ベッドの取り壊し作業でどうしてお腹が痛くなったりするの?
それは、子宮内膜から「プロスタグランジン」という物質が出るからです。
プロスタグランジンは子宮をギュッと収縮させて内膜を押し出す働きがありますが、この収縮が強すぎると激しい痛み(生理痛)になるのです。

では、次に生理中の悩みについて解説していきます!!
生理にまつわる3つの悩みとその原因
多くの女性が経験する生理中の主な悩みには、次の3つがあります。
①月経前症候群、②月経困難症(生理痛)、③過多月経
PMS(月経前症候群)

月経前症候群(PMS : premenstrual syndrome)とは、生理前3~10日の期間に続く心と体の不調のことです。
精神的な症状:イライラ、怒りっぽい、抑うつ状態、集中力の低下、不安感など
身体症状:乳房の張りや痛み、顔や足のむくみ、頭痛、眠気、だるさなど
これらの症状は生理が来ると軽くなったり消えたりします。
日常生活に支障が出るほど症状が重い場合(特に精神症状)、月経前不快気分障害(PMDD)ろ診断されることもあります。
明らかな原因は不明ですが、エストロゲンとプロゲステロンのバランスが急激に変わることが関係していると考えられています。
月経困難症(生理痛)

月経困難症とは、生理に伴って起こる、日常生活に支障をきたすほどの痛みや不調のことです。
主な症状:下腹部痛、腰痛、お腹の張り、吐き気、頭痛、めまい、下痢
症状は生理前~生理開始2日目頃がピークで、生理の終わり頃には落ち着きます。
痛みの主な原因は、先ほど説明した「プロスタグランジン」です。
月経困難症は子宮内膜から産生されるプロスタグランジンという炎症を起こす物質が多いことが報告されています。
プロスタグランジンは子宮筋を「ぎゅーーー」って収縮させることで子宮内膜を剥がす働きがありますが、これが強すぎると腹痛などの症状が出現していると考えられています。
プロスタグランジンの産生を抑制するのがロキソニンです。
痛み止めが効きにくい場合や、年々症状が悪化している場合は、子宮内膜症などの病気が隠れている可能性もあります。
過多月経
過多月経とは、出血量が異常に多いものをいいます。
医学的には、1回の生理で140ml以上の出血がある場合を指しますが、ナプキンを量ることってあまりないのでいまいちピンとこないですよね💦
具体的な目安:
- 昼でも夜用ナプキンが必要
- 1~2時間でナプキンが満杯になる
- 夜中に何度もナプキンを交換しなければならない
- レバー状の大きな血の塊が何度も出る
- めまいや立ちくらみがある(貧血の症状)
過多月経の原因としては、子宮内膜が異常に厚くなっていることや、子宮筋腫、子宮腺筋症などの病気が隠れている可能性があります。
放置すると貧血が進行し、日常生活に大きな支障をきたします。

症状は本当に人それぞれです。
次にピルを飲むと生理のサイクルがどのように変わるのかみていきましょう!!
ピルを飲むとどうなる?体の変化を解説
通常の生理周期の場合
- エストロゲン:増える→減る→また増える(波がある)
- プロゲステロン:増える→減る→また増える(波がある)
このホルモンの波によって、排卵が起こり、生理が来ます。
ピルを飲んでいる場合
- エストロゲン:一定の低い量をキープ
- プロゲステロン:一定の低い量をキープ
外から少量のホルモンを毎日補給することで、波がなくなります。
これが重要なポイントです。

つまり、3ステップの中の分泌期と似ている状態ということです!

この状態だとなにが良いの?

脳には、体の中のホルモン量を感知する仕組みがあります。
エストロゲンとプロゲステロンが存在すると、脳にあるホルモンをだす司令塔が、
🧠「2つともあるからホルモンを出すように指令しなくていいか!」って認識します。
すると、脳から卵巣への「ホルモンを出せ」という指令が止まります。
その結果、卵巣は休眠状態になり、排卵が起こらなくなるのです。
この仕組みを「ネガティブフィードバック」といいます。
難しい言葉ですが、要するに「足りているから作らなくていい」という体の調整機能のことです。
ピルによって起こる6つの変化
排卵が止まり、ホルモンが安定することで、次のような変化が起こります。
変化1:排卵が止まる → 高い避妊効果
正しく飲めば、避妊成功率は99.7%以上です。
排卵しなければ、受精することもありません。
コンドームの避妊成功率が約85%(一般的な使い方の場合)なので、ピルの方が確実です。
変化2:子宮内膜が薄くなる → 過多月経の改善
増殖期がなくなるため、子宮内膜があまり厚くなりません。
剥がれ落ちる量が減るので、経血量が30~50%減少します。
過多月経で悩んでいた方は、生理が驚くほど軽くなります。
変化3:プロスタグランジンが減る → 生理痛の軽減
子宮内膜が薄いと、痛み物質のプロスタグランジンも少なくなります。
子宮の収縮が穏やかになり、約70~80%の方で生理痛が改善します。
「鎮痛剤が手放せなかった」という方が、薬なしで過ごせるようになることも多いです。
変化4:ホルモンの波がなくなる → PMSの改善
ホルモンが一定に保たれるため、心と体の不調が起こりにくくなります。
約50~70%の方でPMS症状が軽減します。
「生理前のイライラがなくなった」「気分が安定した」という声をよく聞きます。
変化5:生理周期が安定する
28日周期で規則正しく生理が来るようになります。
旅行や試験、結婚式などの大事な予定に合わせて、生理日をずらすこともできます。
生理不順で悩んでいた方には、特に大きなメリットです。
変化6:子宮内膜症の進行を抑える
子宮内膜症は、エストロゲンによって悪化する病気です。
ピルでエストロゲンを低く抑えることで、病気の進行を遅らせることができます。
手術後の再発予防にも使われています。
【メリット詳解】ピルがもたらす7つの素晴らしい効果
ここからは、ピルのメリットについて、さらに詳しく見ていきましょう。
つらい生理の悩みから解放される
ピルの最も大きなメリットは、生理に関する悩みが劇的に改善されることです。
改善される症状と効果
- 月経困難症(生理痛)→ 約80%の方で改善
- 過多月経 → 経血量が30~50%減少
- 月経不順 → 規則正しい28日周期になる
- PMS(月経前症候群)→ 約50~70%の方で改善
実際に患者さんから聞く声としては、以下のようなものがあります。
「生理のたびに会社を休んでいたけど、休まなくて済むようになった」
「ナプキンの消費量が半分以下になった」
「生理前のイライラで家族にあたることがなくなった」
「生理用品代が大幅に節約できた」
生理による欠席や欠勤が減ることで、仕事や学業のパフォーマンスが上がります。
鎮痛剤を飲む回数も減り、胃腸への負担も軽くなります。
何より、「次の生理がいつ来るか」という不安から解放されることで、精神的にとても楽になります。
婦人科の病気を予防・治療できる
ピルは、いくつかの婦人科疾患に対して、予防効果や治療効果があります。
子宮内膜症
子宮内膜症は、本来は子宮の中にあるべき内膜組織が、子宮以外の場所にできてしまう病気です。
生理のたびに激しい痛みが起こり、不妊の原因にもなります。
ピルを使うと、病巣の増殖を抑え、痛みを軽減できます。
手術後の再発予防にも高い効果があります。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
卵巣に小さな嚢胞がたくさんできて、排卵がうまくいかなくなる病気です。
生理不順や男性ホルモン過多による多毛、ニキビなどの症状があります。
ピルでホルモンバランスを整えることで、これらの症状を改善できます。
がんのリスクを下げる効果がある
ピルには、特定のがんを予防する効果があることが、多くの研究で証明されています。
卵巣がん
リスク低減:約40~50% 使用期間が長いほど効果が高まります。
10年以上使用すると、リスクが半分以下になるというデータもあります。
しかも、この予防効果は、ピルをやめた後も20年以上続きます。
卵巣がんは「沈黙のがん」と呼ばれ、初期症状がほとんどありません。
発見された時には既に進行していることが多い、怖いがんです。
ピルでこのリスクを下げられることは、大きなメリットといえます。
子宮体がん(子宮内膜がん)
リスク低減:約50% こちらも使用期間が長いほど効果が高まります。
予防効果は、ピルをやめた後も10~15年続きます。
子宮体がんは、エストロゲンの過剰な刺激で発生しやすくなります。
ピルに含まれるプロゲステロンが、子宮内膜を保護する働きをするため、がんのリスクが下がるのです。
大腸がん
リスク低減:約15~20% こちらも長期使用でより効果的です。
大腸がんは日本人女性のがん死亡原因の第1位です。
ピルでリスクを下げられることは、見逃せないメリットです。
注意点:
子宮頸がんについて 一方で、子宮頸がんについては、5年以上の長期使用でリスクがわずかに上がる可能性が指摘されています。
ただし、これはHPV(ヒトパピローマウイルス)感染との関連が大きいと考えられています。
後ほどデメリットの部分で説明します。
骨粗しょう症を予防できる
エストロゲンには、骨を丈夫に保つ働きがあります。
ピルを飲むことで、適度なエストロゲンが体内に維持され、骨密度を保つことができます。
特に以下のような方には重要なメリットです。 ・早期閉経のリスクがある方 ・無月経が長く続いている方 ・激しいスポーツをしている方(疲労骨折のリスクが高い)
将来、閉経後の骨折リスクを減らすことにもつながります。
美容効果が期待できる
ピルには、美容面でのメリットもあります。
ニキビ・肌荒れの改善 男性ホルモンの働きを抑える効果があるため、皮脂の分泌が正常化されます。
特に、生理前に悪化するニキビに悩んでいる方には効果的です。
約70%の方が改善を実感しています。
海外では、ニキビ治療薬としてピルが処方されることもあります。
ただし、すべてのピルに同じ効果があるわけではないので、美容目的の場合は医師に相談してください。
多毛症の改善 PCOSなどで男性ホルモンが過剰になっている方は、体毛が濃くなることがあります。
ピルで男性ホルモンの働きを抑えることで、この症状を改善できます。
ライフプランを自分で決められる
ピルを使うことで、人生設計の自由度が大きく上がります。
仕事やキャリアに集中できる 「いつ妊娠するか」を自分でコントロールできるため、仕事や資格取得に集中する時期を作れます。
「30歳までにキャリアを築いてから、妊娠を考えたい」といった計画が立てやすくなります。
旅行やイベントを楽しめる 大事な旅行、結婚式、試験、スポーツの大会など、生理が重なると困る予定に合わせて、生理をずらすことができます。
「せっかくの海外旅行が生理で台無し」ということがなくなります。
妊娠のタイミングを選べる 「今はまだ妊娠を望んでいない」という時期に、確実に避妊できます。
そして、「そろそろ子どもがほしい」と思ったら、ピルをやめればすぐに妊娠可能な体に戻ります。
高い避妊効果で安心できる
ピルの避妊効果は、正しく飲めば99.7%以上です。
これは、他の避妊方法と比べて非常に高い数字です。
各避妊方法の成功率比較
- ピル(正しく使用):99.7%
- コンドーム(正しく使用):98%
- コンドーム(一般的な使い方):85%
- 避妊リング(IUD):99%以上
- 避妊なし:15%程度
コンドームだけでは避妊が不十分なケースもあります。
破れたり、外れたりするリスクがあるからです。
ピルとコンドームを併用することで、避妊効果をさらに高め、性感染症の予防もできます。
望まない妊娠の不安から解放されることで、精神的にも安定します。
パートナーとの関係も、より安心して築けるようになります。

まさに良いことづくしだね🎶

部長も「女性全員がピルを飲むべきだ」と言われるし、周りの女医さんもピルを飲んでいる人は多いです!

でも、ピルをのむデメリットもあるでしょ?
デメリットも0ではないです💦
では、次にデメリットについて解説していきます!!
【デメリット詳解】ピルの副作用とリスクを正しく知る
メリットが多いピルですが、デメリットや副作用もあります。
正しく理解して、上手に付き合っていきましょう。
軽い副作用(マイナートラブル)
ピルを飲み始めると、体がホルモン環境の変化に慣れるまで、一時的に不快な症状が出ることがあります。
ただし、多くの場合、2~3か月で自然に治まります。
よくある副作用と発生率
不正出血:約20~30% ピルを飲み始めて最初の1~3か月に起こりやすい症状です。
生理以外の時期に、少量の出血があります。
これは、体がホルモン環境に慣れていく過程で起こる正常な反応です。
ほとんどの場合、3か月以内に治まります。
吐き気・嘔気:約10~15% 特に朝起きた時や、空腹時に感じやすい症状です。
食後に飲む、就寝前に飲むなど、タイミングを工夫すると軽減できます。
それでも続く場合は、種類を変更することで改善することが多いです。
頭痛:約10% 軽い頭痛を感じることがあります。
ただし、激しい頭痛や、急に起こる頭痛は、血栓症の警告サインの可能性があります。
この場合はすぐに医療機関を受診してください。
乳房の張り・痛み:約15% 胸が張って痛むことがあります。
これも1~2か月で落ち着くことが多いです。
きついブラジャーを避け、締め付けの少ない下着を選ぶと楽になります。
むくみ・体重増加:約5~10% プロゲステロンの作用で、体が水分をため込みやすくなります。
1~2kgの体重増加を感じる方もいますが、大幅に太ることは稀です。
適度な運動や、塩分を控えた食事で改善できます。
対処法のポイント
- 飲むタイミングを工夫する(食後、就寝前など)
- 水分をしっかり摂る
- 3か月は様子を見る(多くの症状は自然に治まる)
- 改善しない場合は、種類の変更を相談する
ピルにはいくつかの種類があり、含まれるホルモンの種類や量が少しずつ違います。
ある種類で副作用が強く出ても、別の種類に変えることで改善することがよくあります。
我慢せずに、医師に相談してください。
血栓症のリスク(最も注意すべき副作用)
ピルの副作用で最も注意が必要なのは、「静脈血栓塞栓症(VTE)」です。
静脈血栓塞栓症(VTE)とは 血管の中で血液が固まり(血栓)、血液の流れを止めてしまう状態のことです。
主に脚の深い部分の静脈で起こります(深部静脈血栓症:DVT)。
この血栓が肺に飛んでしまうと、「肺塞栓症(エコノミークラス症候群)」となり、最悪の場合、命に関わります。
発生頻度の比較
- ピルを飲んでいない女性:1万人あたり年間1~5人
- ピルを飲んでいる女性:1万人あたり年間3~9人
- 妊娠中の女性:1万人あたり年間5~20人
- 出産直後の女性:1万人あたり年間40~65人
ピルを飲むとリスクは上がりますが、妊娠中や出産後よりは低いことがわかります。
それでも、完全にゼロではないため、注意が必要です。
こんな症状が出たらすぐに受診!ACHES(エイクス)
血栓症の初期症状を覚えておくために、「ACHES(エイクス)」という覚え方があります。
A:Abdominal pain(アブドミナル・ペイン)→ 激しい腹痛 突然の激しい腹痛が起こったら要注意です。
C:Chest pain(チェスト・ペイン)→ 激しい胸痛、息苦しさ 突然の胸の痛みや、息が苦しくなったらすぐに受診してください。
H:Headache(ヘッドエイク)→ 激しい頭痛 今までに経験したことのないような激しい頭痛、突然の頭痛は危険信号です。
E:Eye/Speech problems(アイ/スピーチ・プロブレムズ)→ 目や言葉の異常 急に見えにくくなった、視野が欠ける、ろれつが回らない、うまく話せないといった症状です。
S:Severe leg pain(シビア・レッグ・ペイン)→ 脚の激しい痛み ふくらはぎに突然の激しい痛み、腫れ、熱感、赤みが出た場合です。
これらの症状が「突然」現れた場合は、すぐにピルの服用を中止して、医療機関を受診してください。
夜間や休日でも、救急外来を受診することをおすすめします。
血栓症のリスクを高める要因 以下に当てはまる方は、リスクが高くなります。
喫煙:特に35歳以上で1日15本以上吸う方は絶対に禁忌です。
タバコは血管を収縮させ、血液を固まりやすくします。
ピルとの併用で、血栓症のリスクが大幅に上がります。
ピルを飲むなら、必ず禁煙してください。
肥満:BMI(体格指数)が30以上の方 体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で計算できます。
例:体重70kg、身長160cmの場合 → 70÷1.6÷1.6=27.3 肥満があると、血液がドロドロになりやすく、血栓ができやすくなります。
長時間の同じ姿勢:デスクワーク、長時間フライトなど 脚の血流が悪くなり、血栓ができやすくなります。
こまめに立ち上がって歩く、足首を動かすなどの工夫が必要です。
家族歴:血栓症になった家族がいる方 遺伝的に血が固まりやすい体質の可能性があります。
必ず医師に伝えてください。
年齢:40歳以上の方 年齢とともに血管の柔軟性が失われ、血栓症のリスクが上がります。
血栓症を予防するために ・十分な水分を摂る(1日1.5~2リットルが目安) ・適度な運動を心がける ・長時間の同じ姿勢を避ける(1時間に1回は立ち上がる) ・禁煙する(必須) ・定期的に医師の診察を受ける
子宮頸がんのリスクがわずかに上がる可能性
ピルを5年以上長期間使用すると、子宮頸がんのリスクがわずかに上昇する可能性が報告されています。
ただし、これにはいくつかの背景があります。
子宮頸がんの主な原因は、HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染です。
ピルを使用している方は、性交渉の機会が多い傾向があり、HPVに感染するリスクも高くなります。
そのため、ピル自体が直接の原因なのか、性行動の違いが原因なのかは、はっきりしていません。
対策
- 定期的に子宮頸がん検診を受ける(1~2年に1回)
- HPVワクチンを接種する(推奨)
- パートナーとの性交渉ではコンドームも使用する
これらの対策をとることで、リスクを大幅に減らすことができます。
既存のがんを悪化させる可能性
すでに乳がんや子宮体がんと診断されている方、またはその疑いがある方は、ピルを使用できません。
ピルに含まれるホルモンが、これらのがんを増悪させる可能性があるためです。
そのため、ピルを始める前には、適切な検査を受けることが重要です。
乳がん検診や婦人科検診を定期的に受けている方は、より安心して使用できます。
毎日飲む手間と費用がかかる
ピルは、毎日決まった時間に飲む必要があります。
飲み忘れると、避妊効果が下がったり、不正出血が起こったりします。
費用
- OC(自費):月額約2,000~3,000円、年間約24,000~36,000円
- LEP(保険適用):月額約500~2,000円、年間約6,000~24,000円
継続的な費用がかかるため、経済的な負担を感じる方もいます。
ただし、生理用品代の節約、鎮痛剤の減少、仕事や学校の欠席が減ることを考えると、トータルではプラスになることも多いです。
通院の手間 初回:問診、診察、検査 定期処方:3~6か月ごと 定期検査:血液検査、血圧測定など
通院の時間が取りにくい方は、オンライン診療を利用する方法もあります。
飲み忘れのリスク
ピルは毎日飲むことで効果を発揮します。
飲み忘れると、以下のような問題が起こります。
・避妊効果が低下する ・不正出血が起こる ・ホルモンバランスが乱れる
飲み忘れを防ぐコツ
- スマホのアラームを設定する
- 毎日の習慣(歯磨き、就寝前など)と紐づける
- ピルケースを使って、飲んだかどうかを確認しやすくする
- パートナーに協力してもらう
工夫次第で、飲み忘れは十分に防げます。
【禁忌】ピルを使えない人
ピルは誰でも使えるわけではありません。
安全に使用するために、使えない人、注意が必要な人を知っておきましょう。
ピルを絶対に使えない人(絶対的禁忌)
以下に当てはまる方は、ピルを使用できません。
- 血栓症(血が固まって血管に詰まる病気)になったことがある
- 現在、血栓症がある
- 35歳以上で、1日15本以上タバコを吸っている
- 前兆(キラキラした光が見えるなど)のある片頭痛がある
- 乳がんと診断されたことがある、または疑いがある
- 子宮体がんと診断されたことがある、または疑いがある
- 重度の肝機能障害がある
- 妊娠中、または妊娠している可能性がある
- 授乳中(産後6か月未満)
- 長期間安静が必要な大きな手術を予定している
これらに該当する場合、ピルは使用できません。
他の方法を医師と相談してください。
医師にしっかり相談して、リスクとメリットを比較検討してください。
最後に
いかがでしたでしょうか?
今回はピルについて、生理の仕組みから解説してメリットとデメリットをお伝えしました。
私が産婦人科医として患者さんを診ている中で、ピルを飲み始めて「人生が変わった」とおっしゃる方をたくさん見てきました。
「毎月の生理が怖くなくなった」 「仕事に集中できるようになった」 「パートナーとの関係がより良くなった」
こうした声を聞くたびに、正しい情報を伝えることの大切さを実感します。
実際、医療現場で働く多くの女性医師も、ピルを使用しています。
それは、メリットとデメリットを正しく理解した上で、自分の人生を自分でコントロールする手段として有効だと実感しているからです。
大切なのは、正しい知識を持つことです。
「なんとなく怖い」という漠然とした不安ではなく、科学的な根拠に基づいた情報をもとに判断してください。
自分の体質やライフスタイルに合うかどうか、医師とよく相談してください。
ピルの違いについて知りたい方はこちらの記事を参考にしてみて下さい♪
この記事を読んで、毎月つらい思いをしている人が少しでも減ったら嬉しいです(#^^#)✨
最後までお読み頂きありがとうございました🥰
【参考文献】
産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2023
日本産科婦人科学会「低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤ガイドライン(2020年度版)」
WHO(世界保健機関)「Medical eligibility criteria for contraceptive use (2015)」
日本女性医学学会「ホルモン補充療法ガイドライン2017年度版」
厚生労働省「低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン」




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