
「なんだか最近、急に汗が出たり、イライラしたりするんです……」
そんな変化を感じている40代・50代の方は、多いのではないでしょうか。

「その症状、もしかすると更年期障害のサインかもしれません。一緒に見ていきましょう!」
更年期障害は、決して珍しいものではなく、多くの女性が経験する体の変化です。
今回は、更年期障害の症状・原因・セルフケアの3つの観点から、
産婦人科医の立場でわかりやすく解説していきます。
正しい知識を持つことで、必要以上に不安にならず、
自分に合った対策を選べるようになりますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
【更年期障害の症状】ほてりやイライラだけじゃない、体と心のサイン

まず「更年期」とは、閉経の前後およそ10年間を指す言葉です。
日本人女性が閉経を迎える平均年齢は、50歳前後といわれています。
更年期には、卵巣の働きがゆっくりと低下していきます。
その過程で起こる体調の変化のうち、
日常生活に支障が出るほど重いものを
「更年期障害」と呼びます。
更年期障害の症状は、大きく3つのグループに分けられます。
それぞれどんな症状なのか、順番に見ていきましょう。
1つ目は「血管の症状」です。
顔がカーッと熱くなる「ホットフラッシュ」や、のぼせ、
急に汗が出るといった症状が代表的です。
2つ目は「体の症状」です。
めまいや動悸(どうき、心臓がドキドキすること)、頭痛、
肩こり、腰痛、関節の痛み、手足の冷えや疲れやすさなどが含まれます。
3つ目は「心の症状」です。
気分が落ち込む、やる気が出ない、イライラする、
情緒不安定になる、眠れないといった変化が挙げられます。
ある調査では、36歳から55歳の女性の半数以上、
50代女性では7割以上が、
何らかの更年期症状を経験しているとされています。

「結構、当てはまるかも……これって病気なんでしょうか?」

「更年期そのものは病気ではありません。ただ、症状が重くて生活に支障が出ている場合は、『更年期障害』として治療の対象になりますよ。」
つまり更年期の不調は、決して特別なことではなく、
多くの女性が通る、ごく自然な道だといえるのです。
【更年期障害の原因】女性ホルモン「エストロゲン」の急激な変化

更年期障害が起こる一番の原因は、卵巣の働きが弱くなることで、
「エストロゲン」という女性ホルモンの分泌が大きく揺れながら
減っていくことにあります。
エストロゲンとは、卵巣から分泌され、月経周期を整えたり、
肌や骨、血管の健康を守ったりする働きを持つホルモンのことです。
このエストロゲンが年齢とともに減っていく際、
体はホルモンの急な変化にうまく対応できません。
その結果、自律神経(体温や汗、血管の動きなどを、
無意識のうちに調整している神経のことです)の
バランスが乱れ、ほてりや発汗などの症状につながると考えられています。
さらに、更年期はちょうど子どもの独立や親の介護、
仕事上の役割の変化など、環境の変化が重なりやすい時期でもあります。
このようなストレスや心理的な要因が、
ホルモンの変化に重なることで、症状がより強く出る場合もあります。
つまり更年期障害は、ホルモンの変化という体の要因と、
環境や心の要因が、複雑に絡み合って起こるものなのです。
【更年期障害のセルフケアと治療法】生活習慣の工夫からHRT・漢方まで

更年期の不調とうまく付き合うためには、
まず生活習慣を整えることが基本になります。
これは薬に頼る前の、大切な第一歩です。
年齢に見合ったバランスの良い食事や、無理のない範囲での運動、
質の良い睡眠、そして心身をリラックスさせる時間を持つことが大切です。
規則正しい生活リズムを心がけるだけでも、
症状が和らぐケースは少なくありませんので、ぜひ試してみてください。

セルフケアを試しても症状がつらく、日常生活に支障が出ている場合には、
婦人科への相談をおすすめします。
治療法の1つが「ホルモン補充療法」、通称HRTと呼ばれるものです。
これは、減少したエストロゲンを薬で補う治療法のことです。
HRTは特に、ほてりや発汗といった血管の症状に対して、
効果が高いとされている治療法です。

「ホルモン補充療法って、がんのリスクが心配なんですが……」

「よく聞かれるご質問ですね。現在の研究では、その影響は生活習慣によるリスクと同程度かそれ以下と考えられていますよ。」
気になる点があれば、遠慮せずに担当医に質問してみてください。
納得したうえで治療を選ぶことが、何より大切です。
もう1つの選択肢が「漢方薬」です。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)や加味逍遥散(かみしょうようさん)など、
一人ひとりの体質や症状の出方に合わせて処方されます。
また、気分の落ち込みやイライラといった心の症状が強い場合には、
SSRIやSNRIと呼ばれる、比較的新しいタイプの
抗うつ薬が使われることもあります。
これらの薬は副作用が少なく、
ほてりなどの体の症状にも効果があるとされているため、
心と体、両方の症状に悩む方には選択肢の1つとなります。
大切なのは、「更年期だから仕方ない」とあきらめて、
つらい症状を一人で我慢しすぎないことです。
症状の背景には、まれに甲状腺の病気やうつ病など、
別の病気が隠れていることもあるため、
気になる症状が続く場合は、婦人科での相談を検討してみてください。

「一人で抱え込まず、気になることがあればいつでも婦人科に相談してくださいね。」
【よくある質問】更年期障害Q&A
ここからは、更年期障害についてよく聞かれる質問に、
Q&A形式でお答えしていきます。
Q1. 更年期障害は終わるの?
はい、更年期障害はずっと続くものではありません。
閉経後、体がエストロゲンの少ない状態に慣れてくると、
症状は少しずつ落ち着いていきます。
多くの方は、50代後半から60代前半までに、
症状が改善していくとされています。
ただし、ホットフラッシュ(ほてり・のぼせ)については、
閉経から1年ほどでピークを迎えたあと、
完全に落ち着くまで数年〜10年近くかかる方もいます。
「いつかは終わる」と知っておくだけでも、
少し気持ちが楽になるのではないでしょうか。
Q2. 本当にがんのリスクは上がらないの?
ここは、正確にお伝えしたいポイントです。
まず、子宮を摘出した方が受ける「エストロゲン単独療法」では、
乳がんのリスクはむしろ上がらない、あるいは下がる傾向も報告されています。
一方、子宮がある方がエストロゲンだけを使うと、
子宮体がん(子宮の内側にできるがん)のリスクが大きく上がるため、
必ず黄体ホルモン(プロゲスチン、もう1つの女性ホルモンの薬)
を組み合わせた「併用療法」を行います。
併用療法を正しく行えば、子宮体がんのリスクは抑えられることが分かっています。
乳がんについては、併用療法を5年以上など長期間続けた場合に、
海外の大規模な研究で、わずかなリスク上昇が報告されています。
ただし、その上昇分は肥満・飲酒・運動不足といった生活習慣によるリスクと同程度かそれ以下と考えられており、
HRTを使うと必ずがんが増える、というわけではありません。
大切なのは、自己判断で心配しすぎたり、逆に安心しすぎたりせず、
担当医と相談しながら自分に合った期間・方法を選ぶこと、
そして治療中も定期的な乳がん検診を受けることです。
Q3. 漢方の違いについて教えて
更年期障害でよく使われる漢方薬(かんぽうやく、
生薬を組み合わせて作られる東洋医学の薬のことです)には、
主に3つの種類があり、体質によって使い分けられています。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)は、
色白で疲れやすく、貧血気味で、むくみやめまいがある、
といった体力があまり強くないタイプに向いています。
加味逍遥散(かみしょうようさん)は、
イライラや不安、気分の落ち込みなど、
ストレスによる心の症状が強いタイプに向いています。
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)は、
比較的体力があり、のぼせや肩こり、下腹部の張りなど、
血の巡りの悪さからくる症状が目立つタイプに向いています。
これらはあくまで一般的な目安です。
実際には、ご自身の体質や症状に合わせて、
医師が処方を選んでくれますので、自己判断せず相談してみてください。
Q4. 更年期障害は何歳くらいから始まるの?
更年期は、閉経をはさんだ前後およそ10年間を指し、
目安としては45歳頃から55歳頃までとされています。
ただし、閉経の時期には個人差があるため、
30代後半や40代前半から症状を感じる方もいれば、
更年期をほとんど自覚しないまま過ごす方もいます。
年齢だけで当てはまる・当てはまらないと決めつけず、
気になる症状があれば、年齢に関わらず婦人科に相談してみてください。
Q5. 更年期障害かどうかは検査でわかるの?
更年期障害は、症状の内容や強さを問診で確認しながら、
必要に応じて血液検査を組み合わせて、総合的に診断します。
血液検査では、卵巣の働きに関わる「FSH(卵胞刺激ホルモン)」の値が
上がっていないか、「エストラジオール(女性ホルモンの一種)」の値が
下がっていないかを調べます。
ただしホルモンの値は日によって変動するため、
1回の検査結果だけで診断が決まるわけではありません。
あわせて、甲状腺の病気やうつ病など、
似た症状が出る他の病気がないかも確認しながら、診断していきます。
Q6. 何科を受診すればいいの?
更年期障害が疑われる場合は、まず婦人科を受診するのがおすすめです。
最近では「更年期外来」「女性外来」を設けている医療機関も増えています。
動悸や頭痛、気分の落ち込みなど、症状が多岐にわたるため、
「何科に行けばいいか分からない」と迷う方も多いのですが、
まずは婦人科で相談していただければ大丈夫です。
必要であれば、婦人科から他の診療科と連携してもらうことも可能ですので、
一人で抱え込まず、まずは婦人科の扉をたたいてみてください。
まとめ
更年期障害は、女性ホルモンの変化によって、
多くの女性が経験する自然な体の変化の一つです。
症状の種類や原因を知っておくことで、
いざ自分の体に変化が起きたときも、落ち着いて対応しやすくなります。
つらい症状を我慢しすぎず、生活習慣の見直しやセルフケア、
必要であれば婦人科での治療も選択肢に入れながら、
自分らしく更年期と付き合っていきましょう。
※本記事は一般的な医学情報の提供を目的としたものであり、個々の症状の診断や治療を代替するものではありません。気になる症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。
※本記事は公的機関・学会等の情報をもとに作成した下書きです。公開前に、運営者ご本人による医学的な最終確認をお願いいたします。

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