はじめに
「今回は双子ですね。しかもMD twinです」
一人目を特に問題なく経腟分娩で産んだ方ほど、この一言で頭が真っ白になってしまうことが多いです。

上の子のときは何もなかったのに…MDって何?

不安になりますよね。注意するポイントははっきりしているので、順番に確認していきましょう
今回は、単胎(赤ちゃんが1人の妊娠)との違い、起こりうる合併症とその数字、そしてこれからの健診や出産の流れを、できるだけ具体的にお伝えします。
【MD双胎とは?単胎・DD双胎との違いと「胎盤を共有する」仕組み】
日本では、双子は全妊娠のおよそ1%にみられます。
双子には、胎盤と赤ちゃんを包む膜の数によって、いくつかのタイプがあります。
MD双胎とは「一絨毛膜二羊膜双胎(monochorionic diamniotic twins:MCDA、国内ではMD双胎とも呼ばれます)」のことで、多くは一卵性の双子です。
絨毛膜(じゅうもうまく)とは胎盤をつくる外側の膜、羊膜(ようまく)とは赤ちゃんを直接包んでいる内側の袋のことです。
つまりMD双胎は、「1つの胎盤を2人で共有しているが、羊水の部屋はそれぞれ別」という状態です。

これに対して、胎盤が2つあるタイプをDD双胎(二絨毛膜二羊膜双胎)、胎盤も羊水の部屋も1つのタイプをMM双胎(一絨毛膜一羊膜双胎)と呼びます。

このタイプの見分け(膜性診断)は妊娠初期の超音波検査で行い、遅くとも妊娠14週までに診断します。
まず、赤ちゃんの入っている袋(胎嚢:たいのう)の数を数えます。胎嚢が1つなら一絨毛膜、2つなら二絨毛膜です。
次に、胎嚢の中で赤ちゃんを包む羊膜の数を確認します。羊膜は妊娠9週以前だと薄くて見えにくいため、時期をあけて確認することもあります。
妊娠が進んで膜どうしがくっついてくると、2人を隔てる膜の付け根の形で判断します。付け根が薄くT字型に見えればMD双胎、厚くなだらかなλ(ラムダ)字型に見えればDD双胎です。


胎盤を共有するのって、何がいけないの?

1つの胎盤の中で、2人の血管がつながっていることがポイントなんです
共有している胎盤の中では、ほぼすべてのMD双胎で、2人の血管どうしが吻合(ふんごう=つながること)しています。
多くの場合、血液は2人の間を行ったり来たりしてバランスが取れています。
しかし、このつながりを通じて血液のやりとりが一方向に偏ると、片方の赤ちゃんに血液が集まりすぎ、もう片方が不足する、という状態が起こりえます。
また、1つの胎盤を2人で分け合うため、取り分に偏り(たとえば7対3)が出ると、取り分の少ない赤ちゃんの発育がゆっくりになることもあります。
単胎のときには起こりようがなかった問題なので、「前回と同じ」とは考えず、健診の回数を増やして丁寧にみていく必要があるのです。
【MD双胎に特有の合併症を知ろう〜TTTS・一児発育不全・TAPS〜】
MD双胎では、胎盤内の血管吻合や胎盤の分配差による特有の合併症が起こることがあります。
代表的なものの頻度は、双胎間輸血症候群(TTTS)が約9%、一児発育不全(sFGR)が約15%、双胎貧血多血症(TAPS)が2〜3%、胎児死亡が約4%です。これらは重複して起こることがあるため、単純に合計することはできません。

どれも超音波で見つける方法が決まっていて、健診のたびに確認しています。何を見ているのかを知っておくと、健診が少し安心になりますよ。
① 双胎間輸血症候群(TTTS)
血管のつながりを通じて、一方の赤ちゃん(供血児)からもう一方(受血児)へ、血液が流れすぎてしまう状態です。
血液をもらいすぎた受血児は、尿がたくさん出て羊水が増え、心臓に負担がかかります。血液を送り続ける供血児は、尿が減って羊水が少なくなり、膀胱が小さくなります。

超音波で「羊水が多い子と少ない子の組み合わせ」(受血児の羊水ポケットが8cmを超え、供血児が2cm未満)が確認されると診断されます。
2人の体重差があるだけではTTTSとは診断されません。羊水量の差が診断の決め手です。
重症度は、羊水量の差、供血児の膀胱が見えるか、へその緒や心臓まわりの血流の異常、むくみ(胎児水腫)の有無などから、5段階(Quintero分類)で評価します。
TTTSは妊娠16週以降の妊娠中期に起こりやすく、進行すると2人とも危険になるため、早く見つけることが大切です。

TTTSになったら、もう治らないの…?

今は、お腹の中で行う手術という治療法がありますよ
胎児鏡下レーザー手術という治療で、お腹から細い内視鏡を入れて、胎盤の中のつながっている血管をレーザーで焼き、2人の血液の行き来を止めます。
この手術のあとに少なくとも1人が生存する割合は90%以上、2人とも生存する割合は約70%と報告されています。成績は重症度や治療の時期によって異なります。
手術が行える施設は限られているため、TTTSが疑われた場合は、胎児治療を行っている周産期センターへ紹介されます。
② 一児発育不全(selective FGR:sFGR)
胎盤の取り分に偏りがあり、片方の赤ちゃんだけが小さくなる状態です。
片方の推定体重が同じ週数の基準の下位10%を下回り、2人の体重差が大きい場合に診断されます。
TTTSと違って羊水量に大きな差は出ないことが多く、代わりに小さいほうの赤ちゃんの「へその緒の血流」を超音波で詳しく調べます。
血流のパターンによって3つのタイプに分けられ、血流が保たれているタイプは比較的経過が穏やかですが、血流が途絶えたり逆流したりするタイプは、より頻回の観察や高次施設での管理が必要になります。
③ 双胎貧血多血症(TAPS)
TTTSの仲間で、とても細い血管のつながりを通じて、ゆっくりと少量ずつ血液が移動し続ける状態です。
片方が貧血(血が薄い)、もう片方が多血(血が濃い)になりますが、ゆっくり進むため羊水量には差が出ません。
そのため、赤ちゃんの脳の血管の血流速度(MCA-PSV)を超音波で測って見つけます。貧血の子は血流が速く、多血の子は遅くなります。
TTTSのレーザー手術のあとに、焼き残った細い血管が原因で起こることもあります。
④ 一児死亡が起きた場合
まれですが、何らかの原因で片方の赤ちゃんが亡くなった場合、MD双胎では血管のつながりを通じて、生存している赤ちゃんの血液が亡くなった赤ちゃん側へ急に流れ込むことがあります。
そのため、生存している赤ちゃんに貧血や脳への影響が出ていないかを、超音波やMRIで慎重に評価します。これはDD双胎にはないMD双胎特有の問題であり、MD双胎で健診を密に行う理由のひとつです。
これらの合併症があるため、MD双胎では妊娠16週以降、少なくとも2週ごとの超音波検査が推奨されています。
【妊婦健診・入院・出産はどう変わる?経産婦さんが知っておきたい管理の流れ】
一人目が単胎だった方が最も違いを感じるのは、健診の回数と出産時期だと思います。
健診の間隔と内容
単胎の妊婦健診は、妊娠23週までは4週ごと、24〜35週は2週ごと、36週以降は1週ごとが標準です。
MD双胎では、妊娠16週以降は分娩まで少なくとも2週ごとに超音波検査を行います。施設によっては1週ごとに見ることもあります。
毎回の超音波では、主に次のことを確認しています。
- 羊水の量:2人それぞれの羊水の量を測り、TTTSを早く見つけます
- 推定体重と体重差:2人の育ち方の差を確認し、一児発育不全を早く見つけます
- 血流:へその緒や脳の血管の血流を測り、血流異常やTAPSを早く見つけます
- 子宮頸管の長さ:子宮の出口の長さを測り、早産の兆候を確認します


こんなに通院が多いと、逆に心配になっちゃう…

回数が多いのは、小さな変化を早く見つけるためなんですよ
妊娠後期には、赤ちゃんの心拍のパターンを調べるNST(ノンストレステスト)も加わります。
お母さんの体への負担
双胎妊娠では単胎妊娠より、早産、貧血、妊娠高血圧症候群、血栓塞栓症(血の塊が血管に詰まる病気)、産後の多量出血などが起こりやすいため、お母さんの体調も丁寧に確認します。
血圧測定、尿検査、血液検査(貧血・血糖など)は、単胎のとき以上に大切な検査になります。
上の子のお世話で無理をしがちな時期ですが、お腹の張りが増えたときは横になる時間を意識的に確保してください。
管理入院について
管理入院の有無や開始時期は、施設によって大きく異なります。
合併症がなく外来管理を続ける施設もあれば、分娩体制などを考慮して妊娠後期に入院する施設もあります。入院の目的は、合併症の早期発見や、急な出産に対応できる体制を整えることです。

上の子がいるから、長い入院はつらいな…

入院の方針は病院ごとに違うので、早めに主治医に相談しておきましょうね
「上の子のことがあるので、入院の予定を知りたい」と伝えておくと、家族のサポートや一時保育の手配を妊娠中期のうちから進められて安心です。
出産の時期
合併症のないMD双胎では、妊娠36週台を目安に計画分娩を検討します。ただし、母体や赤ちゃんの状態、施設の方針によって前後します。
妊娠37週以降は、単胎よりも赤ちゃんの状態に注意が必要になるため、国内外のガイドラインでも36週前後の分娩が目安とされています。

前回は陣痛を待てたのに、今回は早めに産むの?

少し早めの出産は、2人を守るための選択なんです
合併症(TTTS、一児発育不全、血流異常など)がある場合は、その重症度に応じて、もっと早い週数での出産が選択されることもあります。
出産の方法
出産方法は、必ず帝王切開になるわけではありません。
先に出てくる赤ちゃん(第1子)が頭位(頭が下)であれば、経腟分娩を選択できることがあります。ただし、第2子の向きや施設の体制を含めた判断が必要です。
前回の分娩経過も参考になりますが、今回経腟分娩が可能かどうかは、第1子の向き、2人の推定体重と体重差、妊娠週数、赤ちゃんの状態、施設の体制などから総合的に判断します。
双胎の経腟分娩では、2人の心拍を連続して確認しながら進め、第1子が生まれたあとに第2子の向きや心拍を確認します。第2子の状態によっては、第1子を経腟で産んだあとに第2子だけ帝王切開になることもあります。
そのため、双胎の経腟分娩はいつでも帝王切開に切り替えられる体制が整った施設で行われます。
第1子が逆子や横向きの場合、2人の体重差が大きい場合、合併症がある場合などは、予定帝王切開が選択されることが多いです。
産後に知っておきたいこと
双胎は単胎より出産後の出血が多くなりやすいため、産後は子宮の収縮や出血量を注意して観察します。
妊娠36週台で生まれた赤ちゃんは、体温・呼吸・血糖の管理のために、一時的に新生児の専門病棟(NICUやGCU)で経過をみることがあります。多くの場合は短期間で、お母さんと一緒に退院できることがほとんどです。

【こんなときは次の健診を待たずにご連絡ください】
次のような症状があるときは、次の健診を待たずにかかりつけの産婦人科へご連絡ください。
- 数日の間にお腹が急に大きくなった、張って苦しい(羊水が急に増えた可能性)
- 息苦しさや動悸が強い
- 胎動が急に減った、または片方の胎動を感じなくなった気がする
- むくみが急に強くなった、頭痛や目のちらつきがある
- 性器出血や破水感、規則的なお腹の張りがある
まとめ
・MD双胎は1つの胎盤を共有し、それぞれ別の羊水の部屋で育つ双子です
・TTTS、一児発育不全、TAPSなど、胎盤の血管のつながりや取り分の差による合併症があります
・妊娠16週以降は、少なくとも2週ごとの超音波検査で羊水量・発育・血流などを確認します
・合併症がなければ妊娠36週台を目安に計画分娩を検討し、第1子が頭位なら経腟分娩も選択肢になります
一人目のときと同じようにはいかない点は確かにありますが、それは「2人を守るための違い」です。上の子のお世話との両立で大変な時期だからこそ、不安なことや家庭の事情は、遠慮なく主治医や助産師に相談してくださいね。
最後までお読み頂き誠にありがとうございました(*˘︶˘*).。.:*♡
もっと詳しく知りたい方へ:産婦人科の研修医・専攻医の先生方向けに、より専門的な内容(膜性診断・TTTSの病期分類・sFGRの管理・分娩時期の判断など)をまとめたブログ「ずーの産婦人科アウトプットver」も運営しています。ご興味があればぜひご覧ください。
参考文献
- 産婦人科診療ガイドライン 産科編2026(CQ701〜705)
- 専門医を目指す周産期診療ワークブック 第3版
- 多胎妊娠 妊娠・分娩・新生児管理のすべて
- ISUOG Practice Guidelines: role of ultrasound in twin pregnancy
この記事は医学的情報の提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、必ず産婦人科専門医を受診してください。

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