今日は「PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)」についてお話しします。
「生理が2ヶ月以上来ない」「生理周期がいつもバラバラ」
そんな経験はありませんか。
その背景に、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)という病気が隠れていることがあります。
PCOSは、排卵やホルモンの働きに影響する病気で、妊娠可能な年齢の女性に比較的多くみられます。
この記事では、PCOSの症状・原因・検査・治療を4つの観点に分けてご紹介します。
気になる症状がある方は、正しい知識を持って早めに婦人科に相談してくださいね。

PCOSって最近よく耳にするけど、どんな病気なんですか?

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)といって、生理不順やホルモンのバランスの乱れに関わる婦人科の病気です。今日は症状・原因・検査・治療を一つずつご一緒に見ていきましょうね

【症状】生理不順・ニキビ・多毛などがサインに

PCOSの代表的な症状は、生理不順です。
卵巣の中で卵胞(卵子を包んでいる袋)がうまく成熟せず、排卵が起こりにくくなることがあります。
その結果、生理周期が長くなったり、数ヶ月間生理が来なかったりします。
また、男性ホルモンの働きが強くなることで、ニキビや多毛(顔や胸、お腹などの毛が濃くなること)がみられる場合もあります。
体重が増えやすくなる方もいますが、やせ型や標準体重の方でもPCOSになることがあります。
気分の落ち込みや不安など、心の不調との関連も報告されています。

最近生理不順だけじゃなくてニキビも増えた気がするんですが、これもPCOSのせいですか?

そうですね。男性ホルモンの影響でニキビや多毛が出ることがあります。ただ、すべての方に全ての症状が出るわけではないので、気になることがあれば一度検査を受けてみましょう
ただし、これらの症状がすべて現れるわけではありません。
生理が3ヶ月以上来ない場合や、生理不順が続く場合は、婦人科で相談しましょう。
【原因】ホルモンバランスとインスリン抵抗性が関係


インスリンが関係してるって聞いたので、やせている私は関係ないですよね?

やせていても安心とは言えないんです。インスリン抵抗性がなくてもPCOSになる方はいますし、体質や遺伝などほかの要因も関係しているんですよ
PCOSの原因は、まだ完全には解明されていません。
関係すると考えられているものの一つが「インスリン抵抗性」です。
インスリンは、血液中の糖を細胞に取り込ませ、血糖値を下げるホルモンです。
インスリン抵抗性とは、インスリンが効きにくくなった状態を指します。
この状態では、体がインスリンを多く分泌することがあり、その影響で卵巣から男性ホルモンが作られやすくなります。
男性ホルモンの増加や、脳から卵巣に働きかけるホルモンの変化などが重なることで、卵胞の成長や排卵が妨げられると考えられています。
ただし、インスリン抵抗性がない方でもPCOSになることがあります。
遺伝的な体質や生活環境など、複数の要因が関係する病気です。
【検査】PCOSはどのように診断するの?

日本産科婦人科学会は、2024年にPCOSの診断基準を改訂しました。
成人では、主に次の3つを確認します。
- 生理不順などの月経周期異常がある
- 超音波検査で卵巣に小さな卵胞が多数みられる、またはAMH(抗ミュラー管ホルモン)というホルモンの値が高い
- 男性ホルモンの過剰を示す所見、またはLH(黄体形成ホルモン)というホルモンの値が高い
基本的に、これら3つすべてを満たし、PCOSと似た症状を起こすほかの病気を除外することで診断します。
なお、初経から間もない思春期の方は、成人とは異なる基準で判断します。
生理不順があるからといって、必ずPCOSというわけではありません。
【治療】妊娠を希望するかどうかで変わります

PCOSの治療は、現在の症状や妊娠の希望に合わせて選びます。
妊娠を希望していない場合
生理が長期間来ない状態が続くと、子宮内膜が過剰に厚くなる「子宮内膜増殖症」や、子宮体がんのリスクが高まることがあります。
そのため、低用量ピルや黄体ホルモン製剤などを使用し、子宮内膜を保護する治療を行います。
ニキビや多毛などが気になる場合も、症状に合わせた治療を検討します。
妊娠を希望する場合

PCOSと診断されたら、もう妊娠できないんでしょうか…?

そんなことはありません。適切な治療で妊娠を目指せる方は多くいらっしゃいますよ。治療の流れを見ていきましょう
PCOSでは排卵が起こりにくいため、排卵を促す薬を使うことがあります。
最初は内服薬による治療を検討し、必要に応じて注射による排卵誘発や生殖補助医療に進みます。
飲み薬の一つに「レトロゾール」という、排卵を促すお薬があります。
2023年に発表された国際的なPCOS診療ガイドラインでは、ほかに不妊の原因がない排卵障害による不妊に対し、レトロゾールが最初に検討される薬とされています。
日本国内では、保険が適用されるかどうかや医療機関の方針によって、選択される薬が異なります。
注射による治療では、卵巣が過剰に反応する「卵巣過剰刺激症候群」などに注意が必要です。
PCOSと診断されても、妊娠できないというわけではありません。
適切な治療によって妊娠を目指せる方は多くいます。
生活習慣の見直しも大切
バランスのよい食事や適度な運動は、PCOSの管理に役立ちます。
体重が多めの方では、適切な減量によって排卵が改善する場合もあります。
一方で、標準体重の方に無理な減量が必要というわけではありません。
また、PCOSでは糖尿病などの代謝異常にも注意が必要なため、必要に応じて血糖値などを確認します。
【まとめ】生理不順をそのままにしないことが大切

PCOSは珍しい病気ではなく、適切な治療や生活習慣の見直しによって症状の改善が期待できます。
生理不順を「体質だから」と自己判断せず、気になる症状があれば婦人科に相談してみてください。
※本記事は一般的な医学情報を紹介するもので、個別の診断や治療を示すものではありません。
参照:公益社団法人 日本産科婦人科学会「多嚢胞性卵巣症候群に関する全国症例調査の結果と本邦における新しい診断基準(2024)について」/International PCOS Network「2023 International Evidence-based Guideline for the Assessment and Management of Polycystic Ovary Syndrome」/MSDマニュアル家庭版「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」


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