妊娠が分かって受診すると、こんなことを言われることがありますよね。
「母子手帳をもらってきたら次は妊娠初期検査を行いますね。」

初期検査って何をするの?
.png)
たくさん検査しているけど何のためにやっているのかわからない
検査は受けたけど何の検査をしたのか分からない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、妊娠12週(約4か月)までに行う妊娠初期検査のすべてを、初産婦さんにもわかりやすくひとつひとつ解説していきます。
検査の意味を知れば、受けるときの安心感がまったく違ってきますよ😊
【なぜ妊娠初期に検査が必要なの?見落とせない2つの理由】
妊娠初期検査には、大切な理由が2つあります。
理由① お母さんの体の状態を早めに把握するため

別に今まで病気したことないし検査をしなくても良くない?
と思う方もいるかもしれません。
でも、自覚症状がなくても気づいていない病気が隠れていることがあります。
妊娠中は体への負担が大きくなるため、早めに発見して適切に対応することがお母さんと赤ちゃんを守ることにつながります。
理由② 赤ちゃんへの感染(母子感染)を防ぐため
感染症の中には、お母さんから赤ちゃんへうつってしまうものがあります。
これを「母子感染(ぼしかんせん)」といいます。
早期に感染していることがわかれば、治療や予防ができます。
だからこそ、妊娠初期のうちに検査を受けることがとても大切なのです!
🌟 ポイント
妊娠初期検査は、お母さんと赤ちゃんの「安全を守る第一歩」です。 日本産科婦人科学会の『産婦人科診療ガイドライン産科編2023』でも、妊娠12週までに受けることが強く推奨されています。
【血液検査で何がわかる?全項目をやさしく解説】
血液検査では、主に以下の4つの分野について調べます。
- 血液型
- 感染症
- 血算(けっさん)
- 血糖(けっとう)
ひとつずつ見ていきましょう!
① 血液型(ABO・Rh・不規則抗体)
ABO血液型はA・B・O・AB型のことで、輸血に必要な情報として確認します。
そして、あわせて確認するのがRh式血液型です。

A型とかの血液型とはまた違うの?
血液型にはA・B・O・AB型のほかに、もうひとつ「Rh式血液型」という分類があります。
Rh式血液型とは、赤血球(血液の中の細胞)の表面に「D抗原(Dこうげん)」と呼ばれる目印があるかどうかで決まります。

病気がみえる vol.10 産科(第4版)より
目印がある人を「Rh陽性(プラス)」、ない人を「Rh陰性(マイナス)」といいます。
日本人のほとんど(約99.5%)はRh陽性です。

Rh陰性だと何か問題があるの?
Rh陰性のお母さんがRh陽性の赤ちゃんを妊娠した場合、問題が起こることがあります。
出産のときや流産・中絶のときに、わずかな量の赤ちゃんの血液がお母さんの体に入ることがあります。
このとき、Rh陰性のお母さんの体は「あ、見慣れない目印(D抗原)がある!」と感じて、赤ちゃんの血液に対して抵抗する物質(抗体:こうたい)を作ってしまいます。
この状態を「Rh感作(Rhかんさ)」といいます。

抵抗する物質があると何がいけいないの?

1回目の妊娠ではほとんど問題になりません。
しかし、2回目以降の妊娠のときに、この抗体が赤ちゃんの赤血球を攻撃してしまうことがあります。
その結果、赤ちゃんに重い貧血(血液が少なくなること)や、全身が黄色くなる「黄疸(おうだん)」などが起こることがあります。
これを「新生児溶血性疾患(しんせいじようけつせいしっかん)」といいます。
しかし、早めに分かれば予防することができます!
「でも、予防できるんです!」
Rh陰性とわかった場合は、妊娠中と、出産や流産の直後に「抗Dグロブリン(こうDグロブリン)」という注射を打つことで、感作(上で説明した「お母さんが抗体を作ってしまう状態」)を防ぐことができます。
だからこそ、妊娠初期のうちに血液型を確認しておくことがとても大切なのです!
また、不規則抗体(ふきそくこうたい)という特殊な抗体の検査も行います。
通常、血液の中には自分と違う血液型に反応する「規則的な抗体」だけがあります。
しかし、輸血や妊娠がきっかけで、それ以外の特殊な抗体が体の中に作られることがあります。
これを「不規則抗体(ふきそくこうたい)」といいます。
不規則抗体は、過去に輸血を受けたことがある方や、妊娠を経験したことがある方に見られることがあります。
不規則抗体の種類によっては、赤ちゃんの赤血球を攻撃して、先ほど説明した「新生児溶血性疾患(赤ちゃんの血液が壊れる病気)」を引き起こすことがあります。
不規則抗体が見つかった場合は、妊娠中から赤ちゃんの状態をより注意深く観察していきます。
そして出産後に、臍帯血を検査して新生児溶血性疾患の評価を行います。
② 感染症(梅毒・B型肝炎・C型肝炎・HIV・風疹)
5つの感染症について調べます。いずれも「症状がなくても感染していることがある」ため、検査がとても重要です。
🔴 梅毒(ばいどく)
梅毒は細菌による感染症で、主に性的な接触でうつります。
近年、日本国内で患者数が急増しており、妊婦さんにとっても他人事ではありません。
感染したまま妊娠を続けると、赤ちゃんに「先天性梅毒(せんてんせいばいどく)」が起こることがあります。
先天性梅毒とは、お母さんから赤ちゃんにうつる梅毒のことで、皮膚の発疹、骨の異常、難聴などさまざまな症状が出ることがあります。
早期に発見すれば、抗生物質(細菌をやっつける薬)でしっかり治療できます!
梅毒については、こちらの記事でも詳しく解説しています👇

🟠 B型肝炎(HBV:ビーがたかんえんウイルス)
HBVは、血液や体液を通じて感染するウイルスで、肝臓(かんぞう)に炎症を引き起こします。
出産時に赤ちゃんにうつる「垂直感染(すいちょくかんせん)」が起こりやすい感染症です。
垂直感染とは、お母さんから赤ちゃんへ直接うつることを指します。
感染した赤ちゃんは将来、慢性肝炎や肝硬変(かんこうへん:肝臓が硬くなる病気)になるリスクがあります。
しかし、早期にわかれば生まれた赤ちゃんにワクチンと免疫グロブリン(めんえきグロブリン:感染を防ぐ注射)を接種することで予防できます。
🟡 C型肝炎(HCV:シーがたかんえんウイルス)
HCVもB型肝炎と同様に血液・体液で感染するウイルスです。
母子感染のリスクはHBVより低いですが、感染している場合は分娩方法や産後の管理を考慮する必要があるため、把握しておくことが重要です。
🟢 HIV(ヒト免疫不全ウイルス)
HIVは体の免疫(病気から体を守る力)を担う細胞を攻撃するウイルスです。
感染すると「エイズ」を発症することがあります。
母子感染を防ぐために、妊娠中や出産時の管理がとても重要で、適切な治療を行えば感染率を大幅に下げることが可能です。
🔵 風疹(ふうしん)

風疹は軽いかぜのような症状のウイルス感染症ですが、妊娠初期に感染すると赤ちゃんへの影響がとても深刻です。

コウノドリ第4巻にも描かれている感染症ですね
私は白内障で目が見えないハルカちゃんがピアノを引いている姿がとても印象的でした
「先天性風疹症候群(せんてんせいふうしんしょうこうぐん)」といって、心臓の病気・難聴(耳が聞こえにくくなること)・白内障(はくないしょう:目のレンズが濁る病気)などが起こることがあります。
ワクチン(予防接種)を投与することで防げる病気ではありますが、過去にワクチンを打った方でも、時間が経つと免疫(体の抵抗力)が弱まることがあります。
そのため、抗体検査(こうたいけんさ:体に免疫があるか調べる検査)が欠かせません。

こんなにいろいろな検査をしてるのか!
そうなんです。どれも自覚症状がなくても感染していることがあるのが怖いところ。
でも、早期に発見すれば対応できるものがほとんどです。
検査を受けることで、赤ちゃんを守ることができます💕
③ 血算(けっさん)
血算とは、血液の中の細胞を調べる検査です。
主に「赤血球・白血球・血小板(けっしょうばん)」の3つを確認します。
赤血球は体中に酸素(さんそ)を届ける役割を持っています。
妊娠中は血液の量が増える一方で、鉄分が不足して赤血球が少なくなる「貧血(ひんけつ)」になりやすいです。
貧血があると疲れやすくなるだけでなく、赤ちゃんに届く酸素が減ってしまうことがあります。
早めに分かれば、鉄剤(てつざい:鉄分を補う薬)などで対処できます。
白血球は体を感染から守る免疫の中心的な存在です。
感染症や炎症があると増える傾向があります。
血小板は出血を止める役割を持つ細胞です。
妊娠中は血小板が少なくなる病気(血小板減少症:けっしょうばんげんしょうしょう)が起こることもあるため、把握しておく必要があります。
④ 血糖(けっとう)
血糖とは、血液の中にある糖分(エネルギー源のひとつ)の量のことです。
妊娠前からあったけど、診断されていない糖尿病がないか確認をします。
妊娠中は「妊娠糖尿病(にんしんとうにょうびょう)」という、妊娠を機に血糖が高くなる状態になることがあります。

糖尿病があるとなにがいけないの?
糖尿病があると、赤ちゃんが大きくなりすぎたり(巨大児:きょだいじ)、早産や産後の赤ちゃんの低血糖などのリスクが上がります。
しかし、早めに発見して食事の管理やインスリン(血糖を下げる薬)による治療を行えば、こうしたリスクを大きく減らせます!
「食べ過ぎていないのに血糖が高くなるの?」と驚く方も多いですが、妊娠中は体の仕組みが変わるため、誰にでも起こりえます。
早めの検査と対策がとても大切です。
すでに糖尿病になっている人、または糖尿病と妊娠の関係について知りたい方はこちらの記事を参考にしてみて下さい☺

【子宮頸がん検査とは?妊娠中でも安全に受けられる理由】
子宮頸がんって何?
子宮頸がん(しきゅうけいがん)とは、子宮の入口部分(子宮頸部:しきゅうけいぶ)にできるがんのことです。
「HPV(ヒトパピローマウイルス)」という性感染症ウイルスが主な原因です。
HPVは多くの人が生涯のうちに感染するとされており、特別なことではありません。
ただし、一部の型のHPVが長期間残ることで、子宮頸がんにつながることがあります。
20〜40代の若い女性にも多く、妊娠を機に初めて検査を受ける方も少なくありません。
子宮頸がんの検査について詳しくこの記事で解説しているので気になる方はこちらを参考にして下さい☺

妊娠中でも安全に受けられるの?
.png)
妊娠中にこの検査をしても大丈夫なの?
ブラシを子宮に突っ込んで流産とかしない?💦
安心してください。子宮頸がん検査は、子宮の入口の細胞をごくわずか採取するだけです。
お腹の中の赤ちゃんには影響はありません。
細胞採取後に少し出血することがありますが、心配しすぎなくて大丈夫です。
なぜ妊娠初期に受けるの?
子宮頸がんは、初期には自覚症状がほとんどありません。
進行してから出血や痛みに気づくことが多いため、定期的な検査が何より大切です。
妊娠を機に検査を受けて、早期に発見できる方も実際にいます。
早期に発見できれば、妊娠を継続しながら経過観察したり、出産後に治療を行ったりすることも可能です。
がんが見つかったらどうなるの?
.png)
検査で異常が出たら妊娠は中止しないといけないの?
まず、「引っかかった=がん」ではありません。
検査で「要精密検査」の結果が出ても、多くの場合は良性の変化(前がん状態)であることが多いです。
進行度や妊娠週数によって方針が異なりますが、担当の先生が丁寧に説明してくれます。
ひとりで不安を抱え込まず、気になることはどんどん聞いてくださいね!
まとめ
妊娠初期検査で調べる内容を整理すると、以下の通りです。
| 検査の種類 | 項目 | 主な目的 |
|---|---|---|
| 血液型 | ABO・Rh・不規則抗体 | 輸血の準備・赤ちゃんへの影響確認 |
| 感染症 | 梅毒・HBV・HCV・HIV・風疹 | 母子感染の予防・早期治療 |
| 血算 | 赤血球・白血球・血小板 | 貧血・血液疾患の発見 |
| 血糖 | 血糖値 | 糖尿病の早期発見 |
| 子宮頸がん検査 | 子宮頸部細胞診 | 子宮頸がんの早期発見 |
これらはすべて、妊娠12週(約4か月)までに受けることが推奨されています。
「検査が多くて不安…」という気持ちはよくわかります。
でも、検査を受けることは赤ちゃんとお母さんを守る大切な行動です。
何か気になる結果があっても、早めにわかれば早めに対応できます。
ひとりで悩まず、いつでも担当の先生に相談してくださいね💕
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました(˘︶˘).。.:*♡
【参考文献】
- 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会編『産婦人科診療ガイドライン 産科編2023』日本産科婦人科学会、2023年
- 日本産婦人科医会「妊婦健康診査の実施について」
- 国立感染症研究所「先天性風疹症候群に関するQ&A」
- 厚生労働省「B型肝炎母子感染防止事業について」
- 日本産科婦人科学会「子宮頸がんについて」


コメント