最近、外来でよく聞かれる質問があります。

先生、RSウイルスのワクチン、打った方がいいですか?
令和8年(2026年)4月から、妊婦さんを対象とした
RSウイルスワクチンが定期接種になりました!
「RSウイルスって何?」「赤ちゃんに本当に効くの?」
「副反応は大丈夫?」
そんな疑問に、産婦人科医としてひとつひとつお答えします😊
【結論】
2026年度から、妊娠28週0日〜36週6日の妊婦さんを対象に、RSウイルス母子免疫ワクチンの定期接種が始まりました。妊婦さんが1回接種することで抗体が胎盤を通じて赤ちゃんへ移行し、生後早期のRSウイルスによる重症下気道感染症を予防します。ただし、すべての感染を防ぐワクチンではなく、接種から出産まで14日未満の場合の有効性は確立していません。
【RSウイルス感染症とは?赤ちゃんへの重症化リスクを知ろう】
RSウイルスってどんなウイルス?
RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus=呼吸器に感染するウイルスの一種)は、
子どもから大人まで、生涯を通じて何度でも感染するウイルスです。
主な症状は、発熱・鼻水・咳など、
一般的な風邪によく似た症状です。

風邪みたいなものなら、そんなに心配しなくていい?
実は、赤ちゃんへの影響が大きいんです!
2歳までに、ほぼすべての赤ちゃんが少なくとも1度は感染する
というほど、とても身近なウイルスです。
赤ちゃんが感染するとどうなるの?
感染した赤ちゃんの約7割は軽症で、数日以内に回復します。
ところが、残りの約3割では咳が悪化し、喘鳴(ゼーゼーする呼吸)や呼吸困難、細気管支炎などがみられることがあります。すべての赤ちゃんが入院するわけではありませんが、月齢が低いほど注意が必要です。
重症化すると、細気管支炎(気管支の細い部分に炎症が起きる病気)や
肺炎を引き起こし、入院が必要になることもあります。

どれくらいの赤ちゃんが入院するの?
2010年代の日本のデータを見てみましょう。
年間12万人〜18万人の2歳未満の赤ちゃんが
RSウイルス感染症と診断されています。
そのうち、3万人〜5万人が入院を要したとされています。

たくさんの赤ちゃんが入院してるんだね⚡️
特に注意が必要な赤ちゃんは?
次のような赤ちゃんは、特に重症化しやすいとされています。
- 早産で生まれた赤ちゃん(体や肺が十分に発達していないため)
- 先天性心疾患(生まれつき心臓に異常がある)のある赤ちゃん
- 免疫不全(病気と戦う力が弱い状態)の赤ちゃん
- 生後まもない新生児(特に生後6か月未満、中でも生後数週〜数か月の赤ちゃんは重症化に注意が必要です)

お母さんから抗体(病気から守るタンパク質)をもらっているから問題ないんじゃないの??
実はここが大切なポイントです!
お母さんから胎盤を通じて移行した抗体は、
生後しばらくで急速に減ってしまいます。
そのため、生まれて間もない時期が最も無防備で、
この時期にRSウイルスにかかると特に重症化しやすいのです。
【妊婦RSウイルスワクチン(母子免疫)の仕組みと予防効果】
どんなワクチン?赤ちゃんにどうやって効くの?
今回の定期接種で使われるのは、
**ファイザー社「アブリスボ®(Abrysvo)」**という組換えワクチンです。
**「組換えワクチン」**とは、ウイルスそのものを使わず、
ウイルスの一部(タンパク質)だけを人工的に作って使うワクチンのことです。

赤ちゃんじゃなくて、お母さんに打つの?
そうしたら結局生まれてから抗体は減るんじゃないの?
そうなんです!これが今回のワクチン最大の特徴です
「母子免疫」って何?

お母さんに打つ → 体内で抗体が作られる →
胎盤を通じて赤ちゃんに移行する。これにより、生まれた直後からRSウイルス感染症、特に重症化に対する予防効果が期待できます。
このしくみを**「母子免疫」**と呼びます。
生後まもない赤ちゃんは、自分でワクチンを打つことができません。
だからこそ、お母さんを通じて赤ちゃんを守るこの方法は、
非常に理にかなっているのです😊
ワクチンの予防効果は?
臨床試験(実際に人に打って安全性・効果を確認する試験)では、
以下の予防効果が報告されています。
| 評価項目 | 生後0〜90日 | 生後0〜180日 |
|---|---|---|
| 医療受診が必要な下気道感染症の予防効果 | 約6割 | 約5割 |
| 重症下気道感染症の予防効果 | 約8割 | 約7割 |


100%じゃないんだ…
ワクチンはすべての感染をゼロにするものではありません。
しかし、重症化を防ぐことが最大の目的であり、
生後3ヶ月以内(0〜90日)での効果が特に高いことがわかります。
赤ちゃんが最もリスクの高い時期を、しっかり守ることができます。
【定期接種の時期・費用・副反応と安全性について】
いつ打てばいいの?
接種対象:妊娠28週0日〜36週6日の妊婦さん
この期間中に1回だけ接種します。
前回の妊娠でRSウイルスワクチンを接種したことがある方も、
今回の妊娠では改めて接種の対象になります。
なお、アブリスボは薬事承認上は妊娠24〜36週に接種できますが、公費による定期接種の対象期間は妊娠28週0日〜36週6日です。妊娠24〜27週に接種する場合は定期接種の対象外となる可能性があるため、費用を含めて医療機関や自治体に確認してください。
また、ワクチン接種から出産までの期間が14日未満の場合、赤ちゃんへの予防効果は確立していません。計画分娩や早産の可能性などから妊娠38週6日までの出産が見込まれる場合は、接種時期を担当医と相談しましょう。
費用・接種場所は?
定期接種はお住まいの市町村で実施されます。
費用や接種できる医療機関については、
お住まいの市町村へお問い合わせください。
里帰り出産でほかの市町村で接種を希望する場合も、
まずはお住まいの市町村にご相談ください。
副反応(ワクチンを打った後に起こりうる体の反応)は?
主な副反応は以下のとおりです。
- 接種部位の症状:痛み・腫れ・赤み
- 全身症状:頭痛・筋肉痛
これらは多くの場合、数日以内に自然に回復します。
妊娠高血圧症候群との関係は?

海外で妊娠高血圧症候群が増えたという報告を聞いたんですが…
妊娠高血圧症候群(妊娠中に血圧が高くなる病気)との関連について、
海外の一部から報告があることは事実です。
ただし、薬事承認(国が安全・有効と認めること)に使われた
臨床試験では、発症リスクの増加は認められませんでした。
海外の一部報告は「解釈に注意が必要」とされており、
現時点では定期接種として推奨されています。
接種後に気になる症状があれば、必ず接種した医療機関にご連絡ください。
健康被害救済制度があります
予防接種は感染症を防ぐために重要ですが、
ごくまれに副反応による健康被害が起きることがあります。
万が一の場合に備え、救済制度が設けられています。
対象は接種を受けた妊婦さんご本人と、生まれた赤ちゃんです。
申請は、接種時に住民票があった市町村へご相談ください。
接種できない方・事前に相談が必要な方
発熱中、重い急性疾患にかかっている、ワクチン成分でアナフィラキシーを起こしたことがある場合は接種できません。また、妊娠高血圧症候群の既往・高リスク、血小板減少、凝固障害、抗凝固薬の使用、重い基礎疾患がある場合は、接種前に担当医へご相談ください。
よくある質問(Q&A)
Q1. 前回の妊娠でRSワクチンを打ちました。今回も打つ必要がありますか?
A. はい、今回の妊娠でも接種の対象になります。
今回の赤ちゃんへの予防のために、改めて接種が推奨されます。
Q2. 28週より前に打ってしまったらどうなりますか?
A. 定期接種の対象は妊娠28週0日〜36週6日の間です。
この期間外での接種については、担当の産婦人科医にご相談ください。
Q3. ワクチンを打っても赤ちゃんがRSウイルスにかかることはありますか?
A. はい、感染することはあります。
ワクチンの主な目的は感染ゼロではなく、重症化を防ぐことです。
特に生後3ヶ月以内の効果が高いとされています。
Q4. 他のワクチンと同時に打てますか?
A. 医師が特に必要と認めた場合は、
他のワクチンとの同時接種が可能です。
Q5. 里帰り出産でも打てますか?
A. 打てます。
お住まいの市町村に事前にご相談いただく必要があります。
まとめ

今回のポイントをまとめます
✅ RSウイルスは2歳までにほぼ全員が感染する、身近なウイルスです
✅ 初感染の乳幼児の約3割では、咳の悪化や喘鳴、呼吸困難などがみられることがあります
✅ 令和8年4月から、妊娠28週0日〜36週6日の妊婦さんに定期接種が開始されました
✅ お母さんが打つことで、赤ちゃんが生まれた直後からの重症化予防が期待できます
✅ 生後3か月以内の重症下気道感染症を約8割予防します
✅ 副反応は接種部位の痛みや頭痛が主で、多くは一時的なものです

「打った方がいいですか?」と聞かれたら、
私は「ぜひ前向きに検討してください」とお伝えしています。
特に、上のお子さんが保育園に通っているご家庭では、
赤ちゃんがRSウイルスにさらされるリスクが高くなります。
ご自身の体の状態や不安なことは、
ぜひ担当の産婦人科医に気軽に相談してみてください😊
最後に
最後までお読みいただきありがとうございます☺
「外来でよく聞かれるからこそ、正しい情報を届けたい!」
という思いでこの記事を書きました。
ワクチンのことは難しく感じるかもしれませんが、
赤ちゃんを守るための大切な選択肢のひとつです。
この記事が少しでもお役に立てたなら、産婦人科医として嬉しいです(˘︶˘).。.:*♡
「こんなことも知りたい」「これって大丈夫?」
そんな疑問や不安があれば、ぜひコメントや診察でお聞かせください。
皆さんの健やかな妊娠・出産を心から応援しています🌸
【参考資料】
- 国立健康危機管理研究機構:RSウイルス感染症(詳細版)
- 厚生労働省:令和8年度からのRSウイルス感染症に対する母子免疫ワクチン定期接種(2026年4月)



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