生理が始まる少し前になると、気分が落ち込んだり、イライラしたりすることはありませんか。
それは「気のせい」や「わがまま」ではなく、PMS(月経前症候群)という、
からだの仕組みによって起こる不調かもしれません。
今日は、PMSと、その重い形であるPMDD(月経前不快気分障害)について、
症状・原因・対策の3つの観点からわかりやすくお話しします。

生理前になると毎月イライラして落ち込む…私の性格の問題なのかな?

性格のせいではありませんよ。PMSという、からだの仕組みで起こる不調かもしれません。一緒に見ていきましょう
【症状編】PMS・PMDDとは?生理前に起こる心と体の変化

PMSとは、月経(生理)が始まる3〜10日くらい前から現れる、
心とからだのさまざまな不調のことです。
症状は月経が始まると自然に軽くなっていくのが特徴です。
軽い症状も含めると、月経のある女性の80〜90%が、
生理前に何らかの不調を経験すると報告されています。
そのうち、PMSと診断される方は20〜30%程度、
PMDDと診断される方は1.2〜6.4%程度とされています。
これらの数値は調査によって幅があるため、
あくまで目安として参考にしてください。
心の症状としては、イライラする、気分が不安定になる、
気分が落ち込む、不安になる、眠れない、集中できないなどがあります。
からだの症状としては、お腹やおっぱいの張り、頭痛、腰痛、
むくみ、だるさ、ほてり、便秘、食欲の変化などが見られます。

気分の落ち込みがひどくて、仕事や家事が手につかない月もあるんです…

心の症状がとても強い場合は、PMDDという状態の可能性もあります。目安を確認してみましょう
PMDD(月経前不快気分障害)は、PMSの中でも心の症状が
とても強く出て、仕事や家庭生活に大きく影響するタイプです。
PMDDでは、生理前の最終週に、気分の変動や強いイライラ、
抑うつ、不安などを含む5つ以上の症状が現れます。
このうち少なくとも1つは、気分の変動、強いイライラ・怒り、
強い抑うつ気分、強い不安・緊張のいずれかであることが目安です。
症状は生理が始まって数日以内に軽くなり、
生理後の週にはほとんどなくなることが特徴です。
診断には、直近1年間の多くの月経周期で同じ傾向がみられることと、
できれば2周期分の毎日の症状記録が参考にされます。
「自分の性格が悪いのかも」と悩む方も多いのですが、
PMSもPMDDも、治療で改善が期待できる医学的な状態です。
【原因編】なぜ生理前に心と体が揺れるの?ホルモンの仕組み

どうして生理前だけ、こんなに不安定になるの?

ホルモンの量が多い・少ないという単純な話ではないんです。仕組みを見てみましょう
PMS・PMDDは、女性ホルモンの量が単純に多すぎたり
少なすぎたりして起こるものではありません。
排卵が終わってから生理が始まるまでの期間を「黄体期」と呼びます。
黄体期とは、排卵後に子宮内膜を整える準備期間のことです。
黄体期には、エストロゲンとプロゲステロンという
2種類の女性ホルモンの血液中の量が、通常どおり変動します。
この正常なホルモンの変動に対して、脳やからだが
敏感に反応してしまうことが関係していると考えられています。
気分の安定に関わる脳内物質「セロトニン」や、
「GABA(ギャバ)」という物質の働きも関係すると考えられています。
セロトニンとは気分を穏やかに保つ働きを持つ物質、
GABAとは気持ちを落ち着かせる働きを持つ脳内の物質のことです。
ただし、こうした仕組みの詳しいところは、
まだ完全には解明されていません。
さらに、もともとのストレスの多さや体質、生活習慣なども
重なって、症状の出方や重さに影響するとされています。
【対策編】PMSとどう付き合う?セルフケアと治療法、受診の目安

PMSは、症状の記録から始めると、対策を立てやすくなります。
生理管理アプリやカレンダーに、症状の種類や強さ、
日常生活への影響を、できれば2周期にわたって毎日記録してみましょう。
生理が終わったあとにも症状が続いていないかを確認することも、
ほかの病気と見分けるための大切な手がかりになります。
生活習慣の工夫としては、規則的な睡眠、無理のない運動、
バランスのよい食事、ストレスをためすぎない工夫が基本とされています。
カフェインやアルコール、塩分などを減らすことで
楽になる方もいますが、効果には個人差があります。
なお、ビタミンB6などのサプリメントを自己判断で
多く摂りすぎると、かえって体に負担がかかることがあるため注意しましょう。

生理前のことで病院に行ってもいいのかな…我慢するしかないと思ってた

我慢しなくて大丈夫です!PMSは治療で改善が期待できます。気軽に婦人科で相談してくださいね
セルフケアを行っても症状がつらい場合は、
婦人科を受診することをおすすめします。
婦人科での治療には、排卵を抑えてホルモンの変動をゆるやかにする、
いわゆる「低用量ピル」が選択されることがあります。
低用量ピルにはいくつかの種類があり、体質や持病によって
使えるものが異なるため、医師と相談しながら選んでいきます。
心の症状が強い場合には、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
という、脳内のセロトニンの働きを助ける薬が使われることもあります。
SSRIには毎日服用する方法と、生理前の一定期間だけ服用する
方法があり、症状に合わせて選択します。
このほか、頭痛や腹痛には痛み止め、むくみが強いときには
症状に応じた薬や漢方薬を組み合わせることもあります。
また、生理が終わっても症状が続く場合は、PMS・PMDD以外に、
気分の落ち込みや片頭痛などの持病が生理前に悪化している可能性もあります。
その場合は、症状の記録を持って婦人科や心療内科に
相談してみることをおすすめします。
特に、「消えてしまいたい」と感じるなど、
つらさが強いときは、生理前であっても一人で抱え込まないでください。
家族や周囲の人に伝えたうえで、心療内科や精神科、
救急の窓口など、早めに相談できるところを頼ってください。
まとめ
生理前の心とからだの不調は、多くの女性が経験するものであり、
決して珍しいことではありません。
症状がつらいときは、我慢したり自分を責めたりせず、
婦人科という専門の相談先があることを知っておいてください。
記録と生活習慣の工夫、そして必要に応じた治療で、
症状とうまく付き合っていく方法が見つかるはずです。
この記事は医学的情報の提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、必ず産婦人科を受診してください。
参考文献
- 日本産科婦人科学会「産科・婦人科の病気 月経前症候群(PMS)」
- 日本産科婦人科学会「月経前症候群・月経前不快気分障害に対する診断・治療指針」(2025年)
- MSDマニュアル家庭版「月経前症候群(PMS)」
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「月経前症候群(PMS)」
- 厚生労働省 女性の健康推進室ヘルスケアラボ「事業主向けお役立ち情報」


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