はじめに
妊婦健診のエコー検査で、「赤ちゃん、ちょっと小さめですね」と言われたことはありませんか
そう言われると、大きな病気なのではないかと、急に不安になってしまう方も多いと思います
今日は「胎児発育不全(FGR)」について、原因や今後の経過のみかたを、なるべくわかりやすくお伝えします

小さめって言われただけで、もう頭が真っ白…

そのお気持ち、当然だと思います。まずは落ち着いて、順番に確認していきましょうね
【赤ちゃんが小さめ=すぐに危険、ではありません】
まず知っておいていただきたいのは、「小さめ」と言われたからといって、すぐに赤ちゃんに危険があるわけではない、ということです
推定体重やおなかまわりの大きさ(腹囲)が、同じ週数の赤ちゃんと比べて小さい場合、「小さめ」と判断されます。ただし、小さい赤ちゃんがすべて胎児発育不全(FGR)とは限りません。もともと小柄で元気な赤ちゃんもいるため、体重の推移や羊水の量、胎盤・へその緒の血流の状態なども組み合わせて、総合的に判断していきます
なお、エコーによる体重の予測には、どうしても1割程度の誤差があります。そのため、1回の検査だけで「小さい」と判断されても、しばらく経ってから再検査を行い、育ち方の推移をみたうえで判断します。念のため、出産予定日に誤りがないかも、あわせて確認することがあります
一度の測定結果だけで慌てず、経過をみていくことが大切です。
【原因は一つではなく、誰のせいでもありません】
「小さめ」と言われると、「私の栄養が足りなかったのかな」「何かいけないことをしたのかな」と、自分を責めてしまう方も少なくありません
しかし、FGRの原因は一つではなく、様々な要因が関わっていることがほとんどです。大きく分けると、次の3つに分類されます
- お母さん側の要因:高血圧、血管障害を伴う糖尿病、腎臓や甲状腺の病気、低栄養状態、喫煙や飲酒など
- 赤ちゃん側の要因:染色体の変化、感染症など
- 胎盤やへその緒側の要因:胎盤の血流や、へその緒の付着位置の問題など
これらが単独で、あるいは複数組み合わさって起こるとされていますが、実際には原因がはっきりとわからないケースも少なくありません
大切なのは、「なぜ小さいのか」を突き止めることよりも、「今、赤ちゃんが元気に過ごせているか」を確認していくことです。ご自身を責める必要はまったくありません
また、持病のお薬の中には、種類によって赤ちゃんの発育に影響するものがあります。お薬を飲んでいる方は、自己判断で中止せず、必ず担当医にご相談くださいね
なお、発育が抑えられる時期によって、大きく2つのタイプに分けられます。妊娠の早い時期からゆっくりと全身が小さく育つタイプと、妊娠後半になってから、胎盤の血流の影響でお腹まわりだけが育ちにくくなるタイプです。日本でFGRと診断される方の多くは、後者の妊娠後半に見つかるタイプとされています
【これから、どうやって経過をみていくの?】
FGRと診断された場合、産婦人科では赤ちゃんが元気に過ごせているかを、いくつかの方法で丁寧に確認していきます

- 血流の確認:主にへその緒(臍帯動脈)の血の流れを確認し、必要に応じて赤ちゃんの脳の血管の血流や羊水の量もあわせて調べます。胎盤から赤ちゃんへ栄養や酸素がきちんと届いているかを確認します
- 胎児心拍数モニタリング:赤ちゃんの心拍のパターンから、元気に過ごせているかを確認します
- 体重や発育の確認:超音波による体重・発育の評価は、一般に2〜3週間程度の間隔で行います。血流や羊水量、心拍は、赤ちゃんの状態に応じてより短い間隔で確認することがあります

検査ばかりで、逆に怖くなりそう…

検査が増えるのは、それだけ丁寧に赤ちゃんを見守っている証拠なんですよ
また、赤ちゃんが週数の早い時期に生まれる可能性が高いと判断された場合には、生まれてくる赤ちゃんの肺などの準備を助けるため、お母さんにステロイドの注射を行うことがあります
なお、FGRであることだけを理由に、必ず帝王切開になるわけではありません。経腟分娩を選択する場合には、赤ちゃんの様子をより慎重に確認しながら進めていきます
これらの検査を組み合わせて総合的に判断し、赤ちゃんが安全に過ごせる状態であれば妊娠を継続し、リスクが高まってきたと判断される場合には、出産のタイミングを検討することになります
つまりFGRの管理とは、「悪いところを治療する」というより、「赤ちゃんが元気でいられる時期を見極めながら、安全に出産のタイミングを決めていく」という考え方に近いものです
生まれた後は、一時的に呼吸や体温、血糖の調整に注意が必要になることがありますが、多くの赤ちゃんはその後、少しずつ体重が追いついていきます(これを「キャッチアップ成長」といいます)。ただし、追いつき方は生まれた週数やFGRの原因・程度によって異なるため、退院後も小児科で発育の様子を確認していきます
【こんな症状があれば、すぐにご連絡ください】
胎動がいつもより明らかに少ない、性器出血や破水感がある、強い頭痛や目のちらつき、みぞおち付近の痛みなどがある場合は、次の健診を待たずに、かかりつけの産婦人科へご連絡ください
まとめ
・「小さめ」と言われても、すぐに心配な状態とは限りません。経過をみて総合的に判断します
・原因は様々で、はっきりしないことも多く、ご自身を責める必要はありません
・血流検査や心拍モニタリングで赤ちゃんの状態を丁寧に確認しながら、安全な出産のタイミングを一緒に考えていきます
不安なことがあれば、遠慮なく担当の産婦人科医に質問してくださいね
最後までお読み頂き誠にありがとうございました(*˘︶˘*).。.:*♡
参考文献
- 産婦人科専門医のための必修知識 2022年度版
- 専門医を目指す周産期診療ワークブック 第3版
- 産婦人科診療ガイドライン 産科編2026
この記事は医学的情報の提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、必ず産婦人科専門医を受診してください。


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