葉酸はいつから・なぜ必要?妊娠前の摂取量を産婦人科医が解説

葉酸はいつから・なぜ必要? 合併妊娠

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こんにちは!産婦人科Dr.ずーです!

総合病院の産婦人科で専攻医として勤務しながら、専門医取得を目指して日々研鑽を積んでいます。

患者さんの疑問や不安についてブログならもっと分かりやすく解説できるのではないかと思い投稿を始めました(#^^#)

私について興味をもって下さった方はこちらの記事を読んで頂けると嬉しいです🥰

こんにちは!産婦人科Dr.ずーです🐣
産婦人科医をしながらどうしてブログを始めようと思ったか。自己紹介を兼ねてお伝えします!

はじめに

これから妊娠を考えている方にとって、「葉酸」は一度は耳にしたことがある栄養素ではないでしょうか

葉酸は、赤ちゃんの脳や脊髄のもとになる部分がきちんと作られるために欠かせない栄養素です

「そもそも、なぜ葉酸が必要なの?」「いつから、どれくらい摂ればいいの?」

今日は、この2つの疑問に順番にお答えしていきます

葉酸って妊娠してから飲み始めればいいんじゃないの?

実は、妊娠に気づく前から準備しておくことがとても大切なんです。順番に説明しますね

【葉酸はいつから、どれくらい摂ればいい?】

結論から言うと、妊娠する前から、1日0.4mg(400μg)の葉酸をサプリメントで摂ることが推奨されています

理由は、赤ちゃんの脳や脊髄のもとになる「神経管」が、妊娠6週ごろまでにはほぼ完成してしまうからです

一般的に妊娠検査薬で陽性がわかるのは妊娠4〜5週ごろ。つまり、「妊娠がわかってから葉酸を飲み始める」のでは、少し遅いということになります

だからこそ、「妊娠を考え始めたら、まずは葉酸から」と言われているのです

なお、神経管がうまく閉じないことで起こる先天的な異常を「神経管閉鎖障害」と呼び、二分脊椎(脊髄の一部が正しく閉じない)や無脳症などが含まれます

葉酸には、食品に含まれる「食事性葉酸」と、サプリメントに含まれる「合成葉酸」の2種類があります。

合成葉酸のほうが体に吸収されやすいことがわかっているため、サプリメントでの摂取が推奨されています

もちろん食事から摂ることも大切です。葉酸を多く含む食品の目安量はこちらです

ただし調理によって失われやすく、体に蓄積されにくい性質もあるため、食事にプラスしてサプリメントを活用するのがおすすめです

なお、大量のアルコール摂取は葉酸の吸収や代謝を妨げるため、妊娠中の飲酒は控えることをおすすめします⚠️

葉酸の隠れた働き:細胞をつくる材料にも関わっています

葉酸は、ビタミンB6・B12と一緒に働くことで、体づくりに欠かせない「メチオニン」というアミノ酸(体をつくるたんぱく質のもとになる物質)の代謝を助けています。

また、DNAのコピーや修復にも関わっており、赤ちゃんのからだが細胞分裂を繰り返して大きくなっていく過程で欠かせない栄養素です

実は「流産予防」にも関係しています

妊娠前から妊娠初期にかけて葉酸とビタミンB6・B12(マルチビタミン)を摂取することは、神経管閉鎖障害だけでなく、妊娠初期の流産を防ぐことにも役立つと報告されています

妊娠中期・後期は「胎盤」にも影響します

さらに近年、妊娠中期・後期の胎盤の状態にも、葉酸やビタミンB6・B12が関わっていることがわかってきました

葉酸やビタミンB6・B12が不足すると、体内に「ホモシステイン」という物質が蓄積し、胎盤の血管に負担をかけます。

これにより、妊娠初期には胎盤がうまく作られない(胎盤形成不全)ことがあり、妊娠中期・後期には、すでにできた胎盤がうまく働かなくなったり(胎盤機能不全)、胎盤への血の巡りが悪くなったりする(胎盤循環不全)ことがあります

これらが原因となって起こる、妊娠高血圧腎症・常位胎盤早期剝離・赤ちゃんの発育不全(SGA)・早産などをまとめて「胎盤に関連する産科合併症」(専門的にはPMPCと呼ばれます)といいます

胎盤のトラブルは、将来の健康にも関わることがあります

妊娠中の合併症が将来の母体の健康サインになることを示す図

この合併症を経験した方は、その後数年〜数十年経ってから、脳卒中や心筋梗塞といった脳・心血管の病気にかかるリスクが高くなることが報告されています。

実際、アメリカ心臓協会・アメリカ脳卒中協会のガイドラインでは、この合併症の既往は、将来の心血管の病気にとって「もっとも重要なリスク要因の一つ」とされています

また、この合併症があった妊娠で生まれたお子さんも、大人になってから心血管疾患・脳卒中・高血圧・糖尿病・脂質異常症(いわゆる生活習慣病)にかかりやすいことが報告されています

胎盤の状態が子どもの将来の健康にも関係することを示す図

それでも、摂ることでリスクは下げられます

こうした話を聞くと不安になってしまうかもしれませんが、ここで知っていただきたい大切なデータもあります。妊娠中を通して葉酸とビタミンB6・B12を摂取することで、これらの合併症のリスクを下げられることが報告されています(例:常位胎盤早期剝離で約3割減、早産で約2割減)

つまり葉酸は、神経管閉鎖障害や初期流産を防ぐ「妊娠前〜初期の栄養素」であると同時に、胎盤を守り、母子ともに将来の健康を支える「妊娠期間を通しての栄養素」でもあるのです。

単独の葉酸サプリだけでなく、ビタミンB6・B12を含むマルチビタミンとして摂ることで、より高い効果が期待できるとされています

私、以前に神経管閉鎖障害の赤ちゃんを妊娠したことがあって…

次はもっと気をつけないといけないですよね?

そのお気持ち、よくわかります。

実は既往がある方には、少し違うご案内があるんです

【以前に神経管閉鎖障害の既往がある方は、葉酸の量が変わります】

神経管閉鎖障害の赤ちゃんを妊娠した経験がある方は、次の妊娠でも再び起こるリスクが、経験のない方と比べて10倍以上高いとされています

そのため、医師の管理のもとで、1日4〜5mgという多めの葉酸を、妊娠前から妊娠11週末まで服用することが推奨されています。これは通常の10倍以上の量になります

この量を市販のサプリメントだけで満たすのは難しく、専用のお薬(フォリアミン®など)が必要になることが多いです

また、この目的での処方は保険が適用されない(自費になる)点も知っておいていただきたいポイントです

なお、高用量の葉酸を長期間続けることについては、まだ分かっていないこともあるため、妊娠12週以降は通常量(0.4mg)に戻すのが一般的です

該当する可能性がある方は、自己判断せず、必ず産婦人科医にご相談ください

でも、ちゃんと葉酸を摂っていれば、絶対に大丈夫なんですよね…?

実はそこ、とても大事な誤解されやすいポイントなんです

【神経管閉鎖障害は、葉酸不足だけが原因ではありません】

ここまで葉酸の大切さをお伝えしてきましたが、誤解しないでいただきたいことがあります

それは、神経管閉鎖障害の原因は一つではないということです。葉酸の不足は原因の一つではありますが、それだけがすべてではありません

つまり、推奨されている量の葉酸をきちんと摂っていたとしても、残念ながら100%予防できるわけではないのです

もし今、神経管閉鎖障害の既往がある方や、現在の赤ちゃんに関わることで不安を感じている方がいらっしゃったら、どうか「自分の摂取が足りなかったせいだ」と自分を責めないでください

それは医学的にも正しい考え方ではありません

また最近の研究では、葉酸だけでなく、ビタミンB6・B12など他のビタミンB群も一緒に摂ることで、より良い効果が期待できる可能性も報告されています

バランスの良い食事を心がけることも、あわせて意識してみてください

まとめ

・妊娠を考え始めたら、まずは1日0.4mgの葉酸サプリメントを始めましょう(妊活を始める前からでも大丈夫です)

・以前に神経管閉鎖障害の既往がある方は、医師に相談のうえ、多めの葉酸が必要になることがあります

・葉酸を摂っていても100%は防げませんが、リスクを下げる効果は十分期待できます。自分を責める必要はありません

葉酸のサプリメントは薬局やドラッグストアで手軽に購入できます。この記事が、これから妊娠を考える方の一歩を後押しできれば嬉しいです

最後までお読み頂き誠にありがとうございました(*˘︶˘*).。.:*♡

【よくある質問】

Q. 妊娠に気づいたのが遅くて、葉酸を飲み始めるのが妊娠5週目でした。もう手遅れですか?

いいえ、そんなことはありません。理想は妊娠前からの摂取ですが、気づいた時点から始めることには十分意味があります。「遅かったから」と自分を責める必要は全くありません。今日から始めれば大丈夫です

Q. 1〜2日、葉酸を飲み忘れてしまいました。赤ちゃんに影響はありますか?

数日程度の飲み忘れで、リスクが大きく変わることはないと考えられています。神経管閉鎖障害は葉酸不足だけが原因ではなく、多くの要因が関わるとされているため、毎日欠かさず摂ることよりも、気づいたときから継続することを意識していただければ十分です

Q. 葉酸はたくさん摂ったほうが安心ですか?

いいえ、多く摂れば摂るほど良いわけではありません。通常は1日0.4mgのサプリメントで十分で、医師の指示がない限り1日1mgを超える摂取は推奨されていません

高用量の葉酸は、ビタミンB12不足のサインを隠してしまうことがあるため、自己判断で量を増やすのは避けてください

Q. 食事だけでしっかり葉酸を摂れていれば、サプリメントは不要ですか?

食品中の葉酸は調理で失われやすく、体への吸収率もサプリメントに比べて低いことがわかっています

バランスの良い食事は大切にしていただきつつ、神経管閉鎖障害の予防効果が確認されているのはサプリメントによる摂取のため、食事にプラスして活用することをおすすめします

Q. パートナー(男性)も葉酸を摂ったほうがいいですか?

現在のところ、神経管閉鎖障害の予防効果が確認されているのは、妊娠する女性側の葉酸摂取についてです

パートナーの葉酸摂取が直接的な予防効果につながるというデータは、今のところ十分ではありません。ただし栄養バランスの良い食生活は、お二人の体づくりの面でもおすすめです

Q. 妊娠中期・後期になっても、葉酸を摂り続けたほうがいいですか?

神経管の予防という点では妊娠12週頃までが特に重要な時期ですが、妊娠期間を通して葉酸とビタミンB6・B12(マルチビタミン)を摂ることは、胎盤の形成をサポートし、妊娠後半のトラブル予防にも役立つと報告されています。授乳期を含め、継続して摂取して問題ありません

Q. 以前に神経管閉鎖障害の赤ちゃんを妊娠したことがあります。次回も同じ0.4mgで大丈夫ですか?

いいえ、該当する方は通常より多い量(1日4〜5mg)が推奨されており、医師の管理のもとでの服用が必要です。市販のサプリメントだけでは量が足りないことが多いため、自己判断で増量せず、必ず産婦人科医にご相談ください

【参考文献】

・産婦人科診療ガイドライン産科編2026

・中井章人.葉酸・マルチビタミンの妊娠中の利点.臨床婦人科産科 2022 Vol.76 No.5:410-415

・病気がみえる vol.5 小児科(第1版)

・病気がみえる vol.10 産科(第4版)

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